2021 Fiscal Year Research-status Report
肝胆膵領域癌におけるIRG1を介した抗炎症作用に基づく新規治療戦略
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21K08792
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉住 有人 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (90895856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高屋敷 吏 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30456024)
久保木 知 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50571410)
細川 勇 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60623676)
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | IRG1 / Tspan15 / 肝細胞癌 / 肝内胆管癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝胆膵領域癌におけるIRG1の効果について検討することを目的にまずは肝細胞癌において、IRG1の発現と予後との相関性について研究を進めた。当院で初回切除が行われた111例の肝細胞癌においてFFPE切片を用いて免疫染色を行いIRG1発現と予後との相関性を評価した。腫瘍部のIRG1高発現群においては、低発現群と比較して予後が良好となっていた。一方で、非腫瘍部のIRG1高発現群においては低発現群と比較して予後が不良となっていた。次に凍結保存された20例の切除検体をlysateにしてWestern blotにてIRG1発現を評価した。正常肝組織4例の平均と比較して、腫瘍部においてIRG1が高発現している群と低発現している群では予後に有意差は認められなかった。また、IRG1はKEAP1-Nrf2経路やNF-kBを介して抗炎症作用をもたらすと想定していたが、凍結保存検体20例の検討ではIRG1発現の高低とNrf2やNF-kBとの相関は認めなかった。 以上より、IRG1の抗炎症作用については、過去に報告は散見されるが、原発性肝がんの中では悪性度が高いとは言えない肝細胞癌においては有意な結果は認めなかった。 そこで次に、肝細胞癌と同様に原発性肝癌であるが、より悪性度が高いと考えられている肝内胆管癌について検討を行う方針とした。肝内胆管癌において我々はWnt-βcatenin系やNF-kBが抗炎症作用や腫瘍促進に働くことを過去に報告している。今回、βcateninやNF-kBを介して抗炎症作用や腫瘍促進に働く可能性のある蛋白としてtetraspanin15に注目した。今後は肝内胆管癌のtetraspanin15の発現の影響について検討を行う方針とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画書に記載した肝胆膵領域癌におけるIRG1の効果について検討を進め、FFPE切片を使用した免疫染色での評価ではIRG1発現と予後とに逆相関を認めたが、凍結保存された20例の切除検体をlysateにしてWesternblotにてIRG1発現を評価すると有意な結果は得られなかった。 次に肝細胞癌株であるHuH7とIRG1のsi-RNAを用いてIRG1のknockdownをし、westernblotにて評価を行ったが、IRG1がknockdownされた細胞においてNrf2やNF-kBの発現を検討したが相関性は認めなかった。肝細胞癌におけるIRG1の抗炎症作用の働きは有意な結果が得られなかったため、今後は同様に原発性肝癌でありより悪性度が高いとされている肝内胆管癌において研究をすすめる方針とした。またIRG1とも関連しうる新たな治療標的蛋白としてTetraspanin15に着目し、検討を進めていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
Tspan15は浸潤能やstemnessとの関連が示唆される論文が多いので肝細胞癌よりも悪性度が高い肝内胆管癌の方がよりTspan15 の癌悪性度への関連を検討しやすい可能性が推測されるため、今後、まずは肝細胞癌においてのTetraspanin15発現と予後との相関性について検討を行っていく予定であるが、並行して肝細胞癌における発現の評価および肝内胆管癌における発現の評価も行っていく。 悪性度がより高いとされている肝内胆管癌におけるTspan15の研究において、FFPE切片における免疫染色でTspan15と予後との関連について検討を行い、予後との関連において有意な結果が判明すれば肝内胆管癌の細胞株を使用した細胞実験に移行してく。 細胞実験においては、過去にTspan15が関連すると報告されている浸潤能や遊走能、stemnessなどとの関連について検討を行う予定である。細胞実験において有意な結果が得られた場合は、マウスなどを用いたinvivoな実験に進むことも視野にいれている。
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Causes of Carryover |
計画書ではじめに検討しようとしていたIRG1と癌悪性度の関連について十分な結果が得られなかったために、癌の悪性度に関連した、より詳細な細胞実験などに進むことができなかった。そのために、予定していた費用よりも使用額が低くなった。来年度は肝内胆管癌のtspan15に関連する実験に対して繰り越して使用していく方針である。また、今年度は新型コロナウイルス蔓延の影響で、計画していた動物実験を遂行することができなかったこと、海外からの実験物品の購入に時間を要したことなども、次年度使用額が生じることの要因となった。
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