2022 Fiscal Year Research-status Report
胆管癌の浸潤転移能獲得におけるS100A10の機能解明と治療戦略への展開
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21K08795
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小嶋 克彦 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (80345743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 敏一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60212023) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | S100A10 / 転移浸潤 / 細胞骨格 / ナノボディ |
Outline of Annual Research Achievements |
S100A10の機能解析を行うにあたり、これまで主に遺伝子ノックアウトやノックダウンによる発現抑制を阻害手法として用いてきた。今年度において、がん治療薬剤としての将来的な応用を考慮し、ヒトS100A10を標的とした阻害ナノボディ抗体の取得を目指した。ナノボディ変異体を表面に発現する酵母ライブラリーに対し、蛍光ラベルした組換えS100A10蛋白質を作用させ、結合複合体をFACSにより選択濃縮した。選択5サイクル目のプールには、特に2種のクローンが濃縮されており、これらを抗S100A10高親和性ナノボディ抗体候補とした。続いて、これらをレンチウイルスベクターにより細胞内導入したところ、ナノボディ抗体を発現した大腸がん由来HCT116細胞では、ビメンチンフィラメントが細胞質内に拡がることができず、核周辺に凝集している様子が観察された。これは、ビメンチンの発現そのものが抑制される表現型を示すS100A10ノックアウト細胞の場合と異なるものであった。また、多核化した細胞の増加が観察されたことから、S100A10阻害による細胞分裂への影響が示唆された。一方、ナノボディ抗体転移阻害の評価を明確なものにするために既存の盲腸-肝転移マウスモデル系の高効率化を企画した。盲腸移植後に肝転移したマウス大腸がん由来CT26細胞を繰り返し盲腸移植することで高転移性細胞株の樹立を試みた。しかし、これまでのところ、移植の繰り返しは、移植部位での造腫瘍性さえ喪失させる結果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトS100A10に対する機能阻害性ナノボディ抗体を取得することができた。胆管癌、大腸癌に対する新規治療法へ向けた技術基盤としてのS100A10阻害剤の開発は、本研究の中心的課題のひとつとして掲げたものであり、これを達成することができた。盲腸-肝転移マウスモデルで使用する予定であった高転移性CT26細胞の樹立はできていないが、既存の細胞株を用いたマウスモデルでも十分評価可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られたナノボディ抗体のAAV発現系や細胞膜透過性ペプチド融合型の構築により、抗腫瘍薬剤としての展開を目指した研究を行う。S100A10がヒト、マウス間でアミノ酸配列が同一であることから、マウスがん細胞で観察されるナノボディ抗体の抗腫瘍作用、転移阻害作用は、ヒトがん細胞においても同様に発揮されることが期待できる。
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Causes of Carryover |
今年度は、比較的低額な消耗品で済む酵母培養を中心としたナノボディ抗体のスクリーニングに時間を費やした。一方、費用がかさむ組み換えナノボディ抗体の大量精製やマウス実験を次年度に行う予定であるため、翌年度分として助成金を請求した。
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