2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌に対するFOLFOXIRI療法における副作用診断チップの開発
Project/Area Number |
21K08799
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 伸明 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50526910)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恒富 亮一 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (10420514)
友近 忍 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (30403679)
硲 彰一 山口大学, 医学部, 教授(連携講座) (50253159) [Withdrawn]
渡邊 裕策 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (80799437)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | FOLFOXIRI療法 / 進行大腸癌 / ゲノム網羅的解析 / 副作用診断チップ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、大腸癌に対するFOLFOXIRI 療法における遺伝子多型を用いた副作用予測因子の報告はない。本研究では、抗がん剤の副作用及び効果を事前に予測するために、臨床情報とリンクした臨床検体を次世代シーケンサーによってゲノム網羅的に解析し、バイオマーカーを同定、さらには バイオマーカー測定キットを開発し、臨床に成果を還元する。高精度の診断アルゴリズムを構築するためには、単一マーカーの値だけでは不十分であり、複数のマーカーや患者情報を組み合わせる必要があり、統計的パターン認識による独自技術によってこれを行う。目的:本研究の目的は大腸癌におけるFOLFOXIRI療法の個別化医療 (precision medicine) 実現のために、個々のがん患者における抗がん剤副作用及び効果予測を可能とするバイオマーカーと体外診断用医薬品を新規に開発し、最も有用で副作用のない治療を提供することである。必要性と意義:本研究により大腸癌に対してFOLFOXIRI療法を施行する際に前もって副作用、また治療効果が予測可能となれば、副作用抑制による患者QOLの向上だけでなく、奏効率の高い患者群に対するFOLFOXIRI療法の選択機会が増えることとなり、治療効果向上につながる。科学的合理性の根拠:大腸癌に対するFOLFOXIRI療法は好中球減少などの高頻度の副作用が問題となっている。大腸癌に対するFOLFOXIRI療法を施行する患者を対象として探索研究を行うことで、副作用の予測因子となり得る遺伝子多型を明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗癌剤副作用は癌細胞ではなく骨髄細胞などの正常細胞への影響により発生することから、患者個人の遺伝子多型が薬物動態などに影響する場合、特定の遺伝子多型から副作用発生を事前予測可能な場合がある。本研究では、抗がん剤の副作用及び効果を事前に予測するために、臨床情報とリンクした臨床検体を次世代シーケンサーによってゲノム網羅的に解析し、バイオマーカーを同定、さらにはバイオマーカー測定キットを開発し、臨床に成果を還元する。令和3-4年度:すでに30症例のFOLFOXILIを行った大腸癌患者検体を採取している。さらに、多施設共同臨床研究(IRB No.2020-127)により150症例の患者検体を関連病院から集積する。具体的には、本研究参加の同意が得られた患者を後ろ向き並びに前向きに登録し、参加施設から大腸癌FOLFOXIRI療法を施行したあるいは予定の患者から検体を採取し、参加施設で保管している血液サンプル (7mL)または切除標本と観察項目情報を山口大学に集約する。収集したサンプルからDNAを抽出して遺伝子多型情報を取得する。特に毒性の強いあるいは無い患者各々10例ずつから次世代シーケンサーを用いて全エクソン解析を行い、そのなかから毒性に関連する(副作用マーカーとなる)遺伝子多型を抽出する。令和4年の上半期までには、得られた遺伝子多型情報と観察項目情報との関連を前向きに探索、合計160例で抽出した遺伝子多型のバリデーションを行う。令和4年後半より、令和3年後半より構築してきた診断アルゴリズムを検証する。現在、令和4年初旬の段階で、ここまでの構想はクリアしており、本研究は概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度:令和5年にはこれらの成果を、前述のDNAチップへ搭載し、診断チップの開発を進める。PMDAに面談して、指摘された不足分のバリデ-ションデ-タを補充する。東洋鋼鈑とも密に連絡を取り、チップの性能を向上させる。我々はこれまでにイリノテカンの副作用関係として、UGT1Aハプロタイプがイリノテカン副作用と有意に関連することや、遺伝子多型の組合せによってイリノテカン副作用の予測性能が向上することを報告し てきた。我々は東洋鋼鈑株式会社との共同研究により、独自のDNAチップによる遺伝子診断薬を開発してきた。イリノテカン副作用と関連するUGT1A遺伝子多型の測定キットについては、体外診断薬として薬機法での承認を得ている。さらに我々は、新たにEDEM3, APCDD1L, R3HCC1遺伝子におけるSNPsにおいて、イリノテカンとの関連を見出し、これらの新たな候補SNPと有害事象との関係性を3剤併用療法(FOLFOXIRI療法)において解析し、今まで報告されていない有害事象関連遺伝子多型を見出せるものと考える。さらに、同じ手法を用いて、さらなる独創的な副作用関連SNPを探索していく。
|
Causes of Carryover |
購入した試薬等の納期の遅れにより、令和4年度に計画を先送りにした研究があるため。
|