2022 Fiscal Year Research-status Report
腹部大動脈瘤患者における次世代シークエンサーを用いた瘤壁中の腸内細菌の網羅的解析
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21K08815
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田島 悠太 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (90884908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 均 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (00400333)
濱中 洋平 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 准教授 (10463788)
赤松 大二朗 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40420012)
阿部 高明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80292209)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹部大動脈瘤は破裂を来すと致死的な疾患であるが、成因が明らかではないため薬物などの内科的治療法や予防法が存在せず、拡大した際に死亡リスクを伴う手術を行うしかない。多くの腹部大動脈瘤患者は動脈硬化性疾患を有し、病理学的にも瘤壁に動脈硬化所見を認めることが多いが、壁の破壊と瘤化のメカニズムは不明である。近年、メタゲノム解析・メタトランスクリプトーム解析の発達により腸内細菌叢の同定が詳細に可能となり、マウスにおいて腸内細菌と腹部大動脈瘤拡大の関連性が示されているが、ヒトでの検討はなされておらず、動脈瘤壁内での腸内細菌の検出報告も少ない。腹部大動脈瘤患者の大動脈瘤壁を採取し腸内細菌を網羅的に検出し、腸内細菌叢との関連性を調べることで、大動脈瘤の成因を明らかにし、プロバイオティクスや抗生物質などの非手術治療や一次予防の一助にするため本研究を申請する。本研究により大動脈瘤の成因解明に踏み込む鍵になる可能性があり、手術適応とならずにフォローアップしているAAA患者の管理における重要な指標と成り得ると考える。ひいてはAAAに抑制的に働く腸内細菌を増やすプロバイオティクスや、AAAを拡大させる働きのある腸内細菌を減らす抗生物質などを用いた、手術によらない低侵襲なAAA拡大・破裂の予防方法の開発・AAAの一次予防につながり、将来のAAA治療を劇的に変える可能性を秘めている。本研究で具体的に明らかにすることは、開腹手術を行うAAA患者の腸内細菌叢・動脈瘤壁の細菌叢・腸内細菌が産生する血中代謝物質、健常者の腸内細菌叢・腸内細菌が産生する血中代謝物質を比較調査し、AAA患者における動脈瘤壁に存在する腸内細菌の同定、糞便中の腸内細菌叢との一致率、並びに血中の代謝物質を含めた健常者との相違点を見出すことを目指す。現在のところ、二十名の腹部大動脈瘤患者から検体を採取し、解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年から2022年にかけての新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、関係各所との連携構築が遅れたため研究計画全体に遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の対象は、瘤径が50mm以上に拡大し手術適応と判断されたAAA患者で東北大学病院総合外科に入院し全身麻酔下で開腹人工血管置換術を施行される患者連続50例である。比較対照群の健常者のデータは共同研究者の東北大学大学院医工学系研究科分枝病態医工学 阿部高明教授が行っているメタゲノム解析・メタトランスクリプトーム解析のデータを用いる(2020年10月時点で約100人の解析が行われている)。腸内細菌叢の同定は患者の糞便により行い、血液は通常の術前採血時に10mlの追加採取を行う。動脈瘤壁の採取は通常通り全身麻酔下で開腹人工血管置換術を行った際に動脈瘤壁・壁在血栓は切り開かれ余剰な組織となるため、この一部を標本として切除して用いる。 細菌叢・代謝物質・転写物の同定はメタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析、メタボローム解析を各検体を用いて行う。現在、20名の検体を集めて解析しているところであり、進捗状況はやや遅れているが、新型コロナウイルス感染症が5類に移行することを受けて、研究と臨床診療体制が通常に復することにより更に研究を推進することが可能な状況になると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により研究計画全体に遅れが生じた。また、ある程度症例数が確保され検体が集まった段階で解析を行う予定であったが、最近になって20症例の検体が集まり、解析に提出したばかりであるため使用額に反映されない事となった。今後、新型コロナウイルス感染症が5類に移行することを受けて、更に研究を推進することが出来ると考えている。
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