2021 Fiscal Year Research-status Report
組織再生における間葉系幹細胞の細胞特性・多様性の分子機構の解明
Project/Area Number |
21K08822
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寒川 延子 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (30432579)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 間葉系幹細胞 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト組織間葉系幹細胞(MSC)は、再生医療における重要な細胞ソースと考えられているが、現状では臨床的有効性の相違が認められている。これはMSCの細胞特性・多様性に一因があると考え、本研究では、疾患環境に特化したMSCの細胞特性・多様性の分子機構の解明を目指している。 ヒト臍帯由来間葉系幹細胞、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を通常培養条件下で培養し、各細胞の継代数に伴う細胞の形態や増殖能、表面マーカーの発現解析を行った。培養初期(-P7)の細胞の形態変化は、いずれの細胞においても大きな違いは認められなかったが、増殖能は、臍帯由来MSCと骨髄由来MSCでは同程度であったのに対し、脂肪組織由来MSCはやや低い傾向であった。フローサイトメトリーによる表面マーカーの発現解析では、培養初期において一般的な幹細胞マーカーの発現に大きな差は認められなかったが、骨髄由来MSCではその後、一部の幹細胞マーカーの発現が低下傾向を示した。病態を模したin vitroの培養として低栄養条件下あるいは低酸素条件下での培養を行い、継時的な細胞形態の変化、増殖能、表面マーカー、サイトカイン産生等について検討を行ったが、安定した結果が得られていないため、再度条件検討を行い、引き続き検討を進めている。基質(足場)の硬さが細胞の分化誘導に影響する可能性が示唆されているため、予備検討として、一般に用いられる培養皿で維持培養した際の細胞運命決定に関わる因子の発現についてPCR法にて検討を行った。その結果、臍帯由来MSCや脂肪由来MSCでは骨髄由来MSCに比べ、トロポミオシン1の発現が高く、臍帯由来、脂肪由来MSCは骨髄由来MSCよりも骨へ分化しやすい可能性があった。以上の結果から、分可能の検討においては、それぞれの細胞への分化に適した足場の検討も含めて行う必要があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題では、各種間葉系幹細胞を心筋細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞あるいは血管周細胞等へ分化させ、分化能や機能性の違いによる遺伝子発現の網羅的解析の実施や、MSCとの混合培養実験を行い、治療に適した間葉系幹細胞の同定や、治療に必要な因子の同定を行う予定であったが、間葉系幹細胞から各種細胞への分化誘導が難航したため、網羅的な解析にまでは至らなかった。当該年度では、それぞれの細胞への分化誘導法の確立にある程度目処がたったことと、他家細胞を用いた検討も併せて行うこととしたため、次年度以降の検討、解析等は実施可能であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
臍帯由来、脂肪組織由来、骨髄由来の間葉系幹細胞を用いて、より詳細に特性解析、機能解析等を中心に行う。 特性解析については、継代数の異なるそれぞれの間葉系幹細胞を用いてマイクロアレイやプロテオミクス解析を行い、細胞外基質や分泌因子の発現を網羅的に解析しその違いを明らかにする。機能解析においては、血管内皮細胞との混合培養にて、血管形成に対するMSCの作用を比較し、血管内皮細胞への影響が高いMSCと低いMSCの遺伝子発現の違いを網羅的に解析し、血管形成に影響を与える候補因子を同定することを目指す。また、障害を受けた心筋細胞あるいは血管内皮細胞と混合培養することで、MSCの細胞保護効果を検討する。保護作用が高いMSCと低いMSCの遺伝子発現を網羅的に解析し、細胞保護に作用する候補因子の同定を目指す。上記の評価をもとに得られた候補因子について、細胞への発現抑制あるいは過剰発現系を用いて、その影響を確認して行く。最終年度には病態モデル動物を用いて、病態環境下でのMSCによる組織修復時の作用因子について検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
購入を予定していた抗体が、手持ちのもので対応できたため、購入を控えた。繰越し分は初期培養細胞購入費の一部に充てる予定である。
|