2021 Fiscal Year Research-status Report
脱分化脂肪細胞移植による側副血管リモデリングメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K08830
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山元 智衣 日本大学, 医学部, PD (00613267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩倉 一博 日本大学, 医学部, PD研究員 (20613269)
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管リモデリング / 細胞治療 / 脱分化脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱分化脂肪細胞(DFAT)は高い血管新生能を有しており、既に臨床研究においても虚血改善を認めている。DFATの血流改善作用として、虚血筋肉中の側副血管のリモデリングが促進したことが考えられ、本研究ではDFATと単球・マクロファージの相互作用に焦点を絞って検討を行なっている。 マウス下肢虚血モデルを用いた移植実験では、免疫不全マウスに対して半膜様筋内の側副血管発達を評価できる下肢虚血モデルを作成した。このモデルマウスにヒトDFATおよびコントロールとして生理食塩水を移植し、継時的(3-7日)に大腿筋組織の組織切片を作成し、マクロファージに対する免疫染色を行った。移植後3日目において、半膜様筋内に局在する側副血管の発達はDFAT移植群と生理食塩水移植群において差を認めなかったが、DFAT移植群では生理食塩水移植群と比べ側副血管周囲にマクロファージの集積が認められ、特に移植された脱分化脂肪細胞付近においてはその傾向は顕著であった。このことよりDFATによる血流改善効果にはDFATとマクロファージの相互作用が関与する可能性が示唆された。 虚血肢においてDFATがマクロファージを誘導する可能性が示唆されたため、DFATがヒト単球由来細胞株であるTHP-1に対して細胞遊走能を促進することができるか検討した。ケモタキシスチャンバーを用い、FBS Free培地で培養したヒトDFAT培養上清とコントロールとしてFBS Free培地によるTHP-1遊走能を比較評価した。ヒトDFAT培養上清はFBS Free培地と比べて有意にTHP-1の遊走能を促進させることが認められた。このことよりDFATにはマクロファージの遊走能を促進する作用があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3、4年度には、DFATと単球・マクロファージの共培養を行い、単球の遊走能、単球からマクロファージへの分化能、マクロファージの形質や機能に対するDFATの関与、またマウス下肢虚血モデルの作成を行い虚血筋肉内にDFATを移植し、側副血管周囲のマクロファージの集積の組織学的評価を予定しており、予定した検討については約6割程度の検討が終了している。 令和3年度について具体的には、DFATの単球に対する遊走能に関してケモタキシスチャンバーを用いた検討を行い、DFATが単球に対して遊走能を促進することを確認した。 マウス下肢虚血モデルに対するDFAT移植に関しては、モデル作成、DFAT移植、組織切片の作成が既に終了している。組織切片を用いた免疫染色により側副血管周囲に集積するマクロファージ数の測定が終了しており、DFAT移植により下肢虚血大腿筋組織内の側副血管周囲にマクロファージが集積することを確認した。 DFATと単球・マクロファージの共培養による単球からマクロファージへの分化能、マクロファージの形質や機能に対するDFATの関与については令和3年度には終了していないが、令和4年度に引き続き検討を行うことが可能である。 以上より、申請時に予定していた令和3、4年度の検討については概ね順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4、5年度においては、DFATと単球・マクロファージの単球からマクロファージへの分化能、マクロファージの形質や機能に対しDFATがどのような影響を及ぼすか検討する。トランスウェルを介してTHP-1とDFATとの共培養を行い、マクロファージ誘導因子であるPMA刺激によるTHP-1のマクロファージへの分化誘導に対する影響や、動脈形成に関わる因子であるVEGF, HGF, SDF-1, MMPs, IL-6, TNFα, IL-10, TGF-βなどの発現変化をリアルタイムRT-PCR法による遺伝子発現やウエスタンブロットによるタンパク産生について評価する。 マウス下肢虚血モデルを用いたDFAT移植実験に関しては、既に継時的に採取した大腿筋組織の組織切片を作成済みである。この組織切片を用いて、マクロファージのイムノフェノタイプに関するタンパクについて免疫染色を行い、側副血管に集積するマクロファージのイムノフェノタイプを検討し、DFATがマクロファージのイムノフェノタイプ変化に関与するか検討する。 また、DFATのTHP-1に対する細胞遊走能にDFATが大量に分泌するMCP-1(Monocyte chemotactic protein-1)が関与する可能性を検討するためにMCP-1中和抗体を用いた共培養を行い、DFATのTHP-1に対する遊走能がキャンセルされるか検討する。また、検討によりMCP-1の関与が確認されれば、ゲノム編集技術を用いてMCP-1ノックダウンDFATを作成する。同様にMCP-1発現ベクターをDFATに遺伝子導入することによりMCP-1過剰発現DFATを作成する。これらの細胞を用いて令和3年度の検討と同様に免疫不全マウスを用いた下肢虚血モデルに対する移植実験を行い、側副血管の発達、側副血管週のマクロファージ集積に対する影響を検討する。
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