2023 Fiscal Year Annual Research Report
胸部大動脈手術後脊髄障害予測因子としての神経特異エノラーゼの有用性の検討
Project/Area Number |
21K08836
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
角浜 孝行 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30360986)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経特異的エノラーゼ(NSE) / 胸部大動脈手術 / 脊髄障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに神経特異的エノラーゼ(NSE)は心臓大血管手術後の脳血管障害の予測因子になり得ることを示したが、これを術後脊髄障害早期発見につながる予測因子として応用できないかと言うことが本研究の目的である。 令和4年度は、得られたデータ解析を中心に行った。計46例の胸部大動脈ステントグラフト内挿術施行患者の検体を採取して解析を行った。脊髄虚血を発症しなかった群の血清NSE値(ng/ml)は、術前13.0±5.9, 術直後 15.4±4.5, 術翌日18.0±7.8, 術後3日12.8±6.0, 術後5日12.0±4.0, 術後7日12.8±4.5と術翌日に最高値をとり、その後低下して術前値まで低下する傾向が見られたが、有意差はみられなかった。大量に輸血が必要だった症例では、脳血管イベントが見られなかったにもかかわらず、血清NSE値の上昇が見られた。これは人工心肺使用時と同様に溶血の影響があると思われ、輸血施行例での絶対値の評価については注意が必要と思われた。一方、術後脊髄障害は4例に認められた(一過性 2、恒久性2)。脊髄障害の有無によるNSEピーク値は、脊髄障害なし18.0±7.8ng/mlに対して脊髄障害ありでは、34.2±15.4mg/mlと有意に高い値を示した(p<0.01)。また、症状が可逆性であった一過性の障害であってもNSE値が有意に上昇し、脊髄障害の予測因子となる可能性が示唆された。一方、脳脊髄液については症例数が少ないこともありNSE値の有意な上昇は認められなかった。症例の蓄積が必要であるとともに採取時期についても再検討が必要と考えられ今後の課題と思われた。 以上の研究成果を第53回日本心臓血管外科学会学術総会(旭川)および第42回日本血管外科学会東北地方会(山形)で発表した。
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