2021 Fiscal Year Research-status Report
がん転移におよぼす麻酔薬の相違:腫瘍免疫に注目したin vivo転移モデルの解析
Project/Area Number |
21K08918
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松尾 光浩 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (70361954)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 麻酔薬 / がん転移 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
麻酔薬は外科手術時に用いられる鎮静剤であり、その投与経路によって静脈麻酔と吸入麻酔に大別される。しかし、麻酔方法の違いが手術患者の長期的な予後にどのような影響をおよぼすについてこれまでほとんど議論されてこなかった。近年、複数の観察研究によって、長時間のがん切除手術においてプロポフォールを用いた静脈麻酔はセボフルランなどの吸入麻酔と比較して術後の生存期間および無再発期間を有意に延長することが明らかとなってきた。術中のわずか数時間しか暴露されない麻酔方法の違いによってその長期予後が影響を受けるということは、その限られた麻酔時間に宿主とがん細胞の間にどのようなダイナミズムが生じるのか非常に興味深い。しかし、その詳細な機序はほとんど解明されていない。そこで本研究ではプロポフォールなどの静脈麻酔とセボフルランなどの吸入麻酔薬が示すがん転移におよぼす影響の差について、特に腫瘍免疫に焦点をあてたin vivoでの解析を行うことを目的とした。 該当年度における研究実績は、「麻酔薬の種類、投与量、暴露時間などの最適化」である。麻酔薬の種類として臨床でも用いられるプロポフォールとイソフルランを選択した。実験動物としてがん転移モデルが豊富であるC57BL/6マウスを選択した。プロポフォールについては、臨床的に使用される持続静注をマウスで再現するために、腹腔内投与および皮下注射のハイブリッド投与法により再現した。また吸入麻酔をマウスに1時間以上の暴露すると、マウスは容易に死に至ってしまう。この機序に低体温が関与していると考え、麻酔クベース内の保温により長時間のマウス生存が可能となった。以上の通り、麻酔薬を用いた条件設定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、該当年度は「麻酔薬の種類、投与量、暴露時間などの最適化」を行った。しかし当初の予定では「宿主免疫細胞に対するディプリーション実験」も並行して行う予定であったが着手することができなかった。この理由については大きく2つの理由があると考えられる。一つ目は麻酔薬の条件設定に予想外に時間を要したことである。1時間を超える麻酔暴露により容易にマウスが死に至ることが分かった。この原因を明らかにして、条件を変更するのに予想外に時間が必要であった。2つめは申請者自身についてである。昨年度は予想外の当科臨床人員の減少があり、申請者自身が研究に費やすエフォートを削減せざるを得なかった。今年度は臨床人員が安定するために研究を邁進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「宿主免疫細胞に対するディプリーション実験」は宿主における標的免疫細胞をディプリーションするための実験条件を整えることが目的であった。しかし上述の通り昨年度中に実験を終了することができなかった。その代わりに、臨床において全身麻酔の影響を受けるあるサイトカインのノックアウトマウスを供与頂くための準備を行っている。それが可能となれば「宿主免疫細胞に対するディプリーション実験」を行わずに、そのサイトカインと麻酔の影響およびがん転移への影響を評価することが可能となる。
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Causes of Carryover |
前述の通り、昨年度は当科臨床人員の減少に伴って臨床エフォートに時間を費やさざるを得なかったことに起因すると考えられる。 今年度は当科臨床人員の増加が予想されるために予定通りの研究エフォートを費やせるものと考えられる。今年度は特定のサイトカインに注目し、そのサイトカインが麻酔薬暴露によりどのように変化するのか、またそれがマウスのがん転移におよぼす影響を検討する。
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