2021 Fiscal Year Research-status Report
モルヒネ誘発性疼痛におけるNMDA受容体活性調節因子Dセリンの作用
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21K08931
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松田 光正 東海大学, 医学部, 講師 (10384918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モルヒネ / ミューオピオイド受容体 / Dセリン / 唾液腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルヒネ誘発性疼痛はナロキソンで拮抗されず、ケタミンを併用することで疼痛が抑制できることから、NMDA受容体の関与が考えられている。しかし、どのようなメカニズムでNMDA受容体が活性化するかについては明らかにされていない。DセリンはNMDA受容体グリシン結合部位の内在性リガンドとしてNMDA受容体活性を調節する。申請者らは、近年、モルヒネの約3-6倍の鎮痛効果を有するシアロルフィンがラット唾液腺より分泌され、ペプチド分解酵素阻害活性により内因性オピオイドペプチドの分解を阻害すること、ならびにシアロルフィンがミューオピオイド受容体のアロステリックモジュレーターとして機能して鎮痛効果を示すことを明らかにした。これらの結果より、ミューオピオイド受容体のアロステリックモジュレーターとして機能するシアロルフィン分泌、ミュー受容体活性、Dセリンに注目し、唾液腺内Dアミノ酸解析を行った。HPLCアミノ酸一斉分析により7週齢Wistar系雄性ラット耳下腺、顎下腺、舌下腺にD-セリンをはじめとする複数のD-アミノ酸が存在することを明らかにした。D-セリンをL-グルタミン酸とともにラット顎下腺に灌流すると副交感神経刺激下の唾液分泌量がD-セリン用量依存的に増加した。一方、高用量L-グルタミン酸単独では副交感神経刺激下の唾液分泌を著しく抑制した。唾液腺マイクロダイアリシス法により唾液腺細胞間隙液にDセリン、Dアラニンが比較的高濃度に存在すること、Dアスパラギン酸は検出されないこと、などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Covid-19禍の影響により一部の実験用試薬、機器類の入手困難であったため、予定していた実験が部分的に実施困難であった。唾液腺由来シアロルフィンは内因性オピオイドペプチドの分解を阻害すること、ならびにシアロルフィンがミューオピオイド受容体のアロステリックモジュレーターとして機能する。このシアロルフィンとミュー受容体活性との関連性に注目し、HPLCアミノ酸一斉分析により7週齢Wistar系雄性ラット耳下腺、顎下腺、舌下腺にD-セリンをはじめとする複数のD-アミノ酸が存在することを明らかにした。D-セリンをL-グルタミン酸とともにラット顎下腺に灌流すると副交感神経刺激下の唾液分泌量がD-セリン用量依存的に増加した。これらの研究成果の一部を国際誌BIologyに掲載されるなど、一定の成果を挙げることができたことにより、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は1) モルヒネを高用量を投与したラット脊髄後角におけるDynならびにシアロルフィン遊離量をin vivoニューロペプチドサンプリングシステムによりを定量する、2)モルヒネ誘発性疼痛モデルの脊髄後角における、グルタミン酸量、Dセリン量を定量的に解析する、3)モルヒネ誘発性疼痛モデルラットの脊髄後角におけるpreprodynorphin、Dセリン合成酵素 (Serine racemase: Srr)、 Dセリン分解酵素 (D-amino acidoxidase; DAO), Dセリントランスポーター(アラニンセリンシステイン-1; Asc1), NMDA受容体などの発現量の変化を免疫組織化学的、In situhybridization(ISH)法で定性解析するとともに、脊髄後角の組織における各種タンパク質、遺伝子発現をWestern blot (WB)法、qRT-PCR法にて定量的に解析する、4) Srr, DAO欠損マウスなどの遺伝子改変動物を用い、ラットを用いた実験と同様な実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
Covid-19禍の影響により一部の実験用試薬、機器類の入手困難であった。モルヒネ高用量を投与した脊髄後角におけるDynならびにシアロルフィン遊離量をin vivoニューロペプチドサンプリングシステムにより、グルタミン酸量、Dセリン量を定量する予定である。
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