2022 Fiscal Year Research-status Report
アデノ随伴ウイルスを用いた痛みの遺伝子治療の基礎的基盤の構築
Project/Area Number |
21K08940
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
川田 大輔 旭川医科大学, 医学部, 客員講師 (30595773)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 浩嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (00550641)
神田 恵 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50516820)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | GAD67 / GABA / 遺伝子治療 / ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の医学の発展により遺伝子治療は多くの領域で注目されており、中でもウイルスベクターを用いた遺伝子治療は、がん治療、代謝疾患、神経疾患等の分野で臨床応用が既に開始している。しかしながら痛みに対する遺伝子治療は未だに確立されていない。我々は今までに痛みの遺伝子治療の有用性や神経障害性疼痛の機序を解明する研究成果を報告してきた。本研究はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)67を発現させ脊髄後角のγ-アミノ酪酸 (GABA) 合成を促進するウイルスベクターを用いた遺伝子治療の有用性を明らかにし、その鎮痛機序を解明することを目的としている。本研究ではまずはじめにGABA産生の促進のためGAD67を導入するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成した。AAVベクターには神経細胞特異的に標的遺伝子を発現させるためのプロモーターを装備させ、神経組織でのみGABA産生が促進する機能を付加している。次に作成したAAVベクターの機能評価を行った。機能評価には初代培養神経細胞および実験動物(ラット)を用いた。緑色蛍光タンパク質(GFP)をサイトメガロウイルス(CMV)またはシナプシンⅠ(SYN)プロモーター制御下で発現するAAVベクター(CMV-AAVベクターおよびSYN-AAVベクター)を作成した。この2種のAAVベクターをラットに髄注しPCR法及び免疫染色法を用いて脊髄における導入遺伝子の発現を調べた。PCR法において、CMV-AAVベクター投与群およびSYN-AAVベクター投与群の両群で、ラット脊髄でのGFP発現が誘導された。免疫染色法では、SYN-AAVベクター投与群でのみ神経細胞に特異的なGFP発現が認められた。本研究により、SYNプロモーターを持つAAVベクターは、ラット脊髄の神経細胞へ特異的に標的遺伝子を導入する性質を持つことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の研究概要に記述したとおり、SYNプロモーターを持ったアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、ラット初代培養神経細胞に加えてラット脊髄においても神経細胞特異的な遺伝子発現を誘導し、神経組織でのみGAD67遺伝子を導入することが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
作成した神経細胞特異的な遺伝子導入を可能にするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを1疼痛モデルラットに髄注して、痛みの遺伝子治療を行う。行動解析により疼痛閾値を計測し、ウイルスベクターを用いた疼痛治療による影響を経時的に調べていく。鎮痛効果ならびに、鎮痛効果の分子生物学的機序を解明する。
|
Causes of Carryover |
本研究の情報収集や中間報告を行うために参加予定であった国外学会への参加に関して、COVID-19の感染流行から2022年度は見合わせたために未使用額が生じた。 令和5年度はウイルスベクターの作成を継続させ、動物投与のために本研究で使用するベクターの量産体制を整えていく。作成したベクターの機能評価を動物レベルでは大量のウイルスベクターが必要となるため、ウイルスベクター作成のための試薬、プラズミド、cDNAや、手術用器具、消耗品、実験動物(ラット)購入・飼育費などに充てる。また、成果報告として、国内外の学会にて報告することを考えているため、資料の収集、英文校正料や学会参加費(交通費・旅費を含む)に充てる。
|
Research Products
(1 results)