2021 Fiscal Year Research-status Report
脳血流量の変化を指標とした慢性疼痛患者の脳機能評価
Project/Area Number |
21K08950
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
杉浦 健之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20295611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 晴子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (90534751)
近藤 真前 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (30625223)
酒井 美枝 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80813120)
藤掛 数馬 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (00791162)
仙頭 佳起 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80527416)
植木 美乃 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40467478)
植木 孝俊 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60317328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 体性感覚 / 脳血流 / 慢性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、体性感覚や内受容感覚に注意が向いている際に現れる脳血流量の変化を指標とした脳機能検査の確立を目的としている。痛み感覚・体性感覚検査として、定量的感覚検査が適切であるか、脊髄のwind-up現象のような痛みの伝導増強機能を評価するとされるtemporal summation(TS)、下行性疼痛制御機能を評価するとされるcentral pain modulation(CPM)の評価を行なった。16名の健常人で、繰り返しの刺激で痛みの強度(VAS)が増加したものは75%(12名, VAS+12~+145 %)、痛み負荷条件(VAS>60, 11名)のうち、痛み強度の軽減が確認できたものは、36%(4例, VAS-3~-39 %)であった。 研究結果に与える影響を調査するため、外来を受診した慢性疼痛患者の検査結果を評価した。ICD-11で一次性慢性痛に分類された患者は61人(①慢性一次性筋骨格系痛(n=27)が最も多く、②慢性一次性全身痛(n=17)、③慢性一次性頭痛・顔面痛(n=16)、慢性一次性内臓痛(n=1))であった。患者特性に関して、慢性一次性全身痛では、日常生活での不自由度、不安・抑うつスコアーが他に比べて高く、頭痛・顔面痛では、痛み強度と痛みに対する破局化思考が高い傾向にあった。精神科医の診察で、一次性慢性痛の約6割の患者(61人中、37人)に、何らかの精神疾患(うつ病、双極性障害、身体症状症など)や発達障害(ADHD、ASD)が診断されたことは重要な知見である。一方、二次性慢性痛では、2割の患者(44人中、10人)にしか、精神疾患や発達障害は診断されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
痛み感覚・体性感覚検査として、定量的感覚検査のtemporal summation(TS)、central pain modulation(CPM)の評価を行なったところ、健常人におけるTS検査では、先行研究と同様の結果が得られた。しかしながら、CPM検査では、痛み強度の軽減が確認できる割合が少なかった。ピンプリックによる刺激方法で行っていることが異なる結果となっているかもしれない。刺激方法を変更して、再度測定を行う必要がある。前頭前野NIRS測定・評価に関しては、痛み刺激や注意課題を与える前段階にあり、まだ安定した計測結果が得られていない。測定機器の設定調整やプローブの変更などを検討するなど、測定を行う工夫が必要と考える。健常人で、安定した結果が得られるように、機器設定条件変更を加えてさらに検討が必要である。定量的感覚検査の適正化を行なった上で、NIRS測定を開始する。 慢性疼痛患者は、これまで年間100名程度は受診している。その中で慢性一次性筋骨格系疼痛、慢性一次性全身痛の患者が比較的多く受診することが確認でき、研究対象として適切と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
痛みの感覚検査(体性感覚検査)では、定量的感覚検査におけるcentral pain modulation(CPM)の評価に関しては、刺激方法をピンプリックによるものから、圧刺激によるものに変更して検討する。他に、45~46度の侵害熱刺激を用いたオフセット鎮痛による評価に変更も考慮する。 慢性疼痛患者の背景調査で、うつ病の併存も比較的多く含まれることが分かったが、うつ病では、前頭野の血流に変化があると報告されている。感覚刺激を与えた場合の脳内反応記録を行うが、ICD-11による慢性痛患者の背景分類と同時に、精神科疾患併存に配慮して研究を行う必要が考えられた。また、慢性痛の患者、特に全身痛の患者における、中枢神経感作の評価も加えて評価したい。 別の課題では、同一のセットアップを用いて前頭前野NIRS (Near-Infrared Spectroscopy、近赤外分光法)を測定できている。NIRS測定と結果評価に関しては、共同研修者、学外の専門家、学内で先行して研究を実施している研究者とのミーティングを開き、正確な測定を行うための注意点や結果評価方法について討論する予定である。 慢性一次性疼痛患者には精神疾患の併存も多いことが分かったため、慢性二次性筋骨格系疼痛の患者も、対象として選択することを考慮する。
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Causes of Carryover |
現行の機器で測定条件を調整しながらNIRS計測データを収集中である。調整終了後にNIRSヘッドセット更新する予定であったが、年度内に調整が完了できておらず、次年度に更新予算が必要となる。データが集まり次第に評価を行うため、生物統計解析ソフトの購入も次年度に繰り越す。
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