2022 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬による脳保護あるいは脳障害作用のメカニズム解明
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21K08980
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
柴田 勝一郎 東京医科大学, 医学部, 助教 (70869429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 博之 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (60266476)
河内 文 東京医科大学, 医学部, 助教 (60897932)
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
石田 裕介 東京医科大学, 医学部, 講師 (40805884)
小林 賢礼 東京医科大学, 医学部, 助教 (80837724)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | mitochondria / anesthetics / propofol / mPTP / Oxygraph-2k |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、麻酔薬による臓器保護作用と細胞障害作用に注目が集まっているが、詳細は明らかになっていない。本研究では、各種静脈麻酔薬がミトコンドリアに与える影響に主に焦点を当て、それらのメカニズムを解明することで、より安全な周術期医療を確立する事を目的とする。 今年度は、前年度に得られた結果をふまえ、各種麻酔薬のうち特にプロポフォールに焦点を当て、プロポフォール暴露時のマウス大脳皮質由来のミトコンドリアについて、その呼吸能及び膨化のさらなる測定を行った。それぞれ、呼吸能の測定にはOxygraph2k (OROBOROS) を、膨化の測定には蛍光分光光度計LS55 (Perkin Elmer) を用いて行った。また、プロポフォール暴露時のミトコンドリアからのシトクロムc放出の有無を確認するためにウエスタンブロッティングによるタンパク解析も行った。これらの実験は前年度から取り掛かってはいたが、さらに試行回数を増やしたことでデータの精度を上げることが出来た。 結果、高濃度プロポフォール暴露によりミトコンドリアは膨化を伴う呼吸機能不全を起こすが、その際にシトクロムcは放出されないこと、またmPTP開孔阻害効果のあるCyp D KOマウスでもその機能不全が改善されないことが示された。 これらの結果より、プロポフォールによるミトコンドリア機能阻害はmPTPの開孔を介さない経路で引き起こされていることが示された。 本年度中には成果の発表までには至らなかったが、来年度中の論文投稿を目指している。今年度の直接経費は主にこれらの測定に必要な試薬等の消耗品およびマウスの購入費に充てられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの実験により、集中治療領域で使用する代表的な鎮静薬であるプロポフォール・デクスメデトミジン塩酸塩・ミダゾラムについて、臨床範囲の10倍程度の濃度存在下でマウス大脳皮質由来のミトコンドリアの呼吸能の測定を行ったが、有意な変化が観察されたのはプロポフォールだけであることがわかったため、それ以降の実験はある程度プロポフォールに焦点を絞ることができた。そのため、前年度のうちから本年度予定の実験にも取り組むことができた。 年度の後半にはディープフリーザーの故障により実験がストップするトラブルもあったが、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
静脈麻酔薬投与マウスを用いたメタボローム解析及びmRNA解析による網羅的検討を行う。 プロポフォールをマウスへ腹腔内投与後、6時間及び18時間経過後に大脳皮質のサンプリングを行い、メタボローム解析を行う。また、大脳皮質サンプルより抽出したmRNAを用いてDNAマイクロアレイ解析を行い、定量的な遺伝子発現データからプロポフォールが関与する脳内新規遺伝子の網羅的解析を施行する。 これによりプロポフォールが脳に与える影響をタンパク質レベルと遺伝子レベルで解析・検討する。
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Causes of Carryover |
おおむね順調に実験が進んだため、想定よりも試薬代等が抑えられたこと、また、ディープフリーザーの故障により実験がストップしていた時期があったこと等により使用金額が少なくなった。 次年度は主にメタボローム解析やmRNA解析等の外注を利用する予定であるため、そちらに充当したい。
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