2022 Fiscal Year Research-status Report
末梢神経系グリア細胞を標的とした痛みの慢性化メカニズムの解明
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21K08988
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 末梢神経系グリア細胞 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gfap-CreマウスとDREADD法を組み合わせて末梢神経系グリア細胞を特異的に活性化もしくは抑制したときの疼痛関連行動の変化を解析する予定であったが、Gfap-Creマウスの繁殖が出来なかった。従って、末梢神経系グリア細胞と感覚神経細胞との相互作用に関与する因子に焦点を当てて探索を行った結果、Hedgehog(Hh)シグナルが疼痛に関与していることが示唆された。神経因性疼痛モデル(SNT)作製後、末梢神経系グリア細胞においてHhシグナルのリガンドの一つであるsonic hedgehog(Shh)の発現の増加が認められ、一方、受容体の一つであるpatched1は感覚神経に発現していることが認められた。Hhシグナルの疼痛への関与を調べるため、SNTマウスにHhシグナルの阻害剤であるvismodegibを髄腔内投与したところ、濃度依存的に痛覚関連行動が抑制された。また逆に、naiveマウスにHhシグナルの活性化剤であるSAGを投与したところ、痛覚関連行動が誘発された。Shhの感覚神経への作用を初代培養細胞を用いて検討した結果、vismodegibの処置により感覚神経からのATPの放出及び感覚神経の自発活動の頻度が抑制された。以上の結果より、神経損傷後において末梢神経系グリア細胞でShhの発現が誘発され、感覚神経に作用してATPの放出を促しており、その結果、持続的な疼痛が起こっていることが示唆された。末梢神経系グリア細胞と感覚神経のHhシグナルを介した相互作用が疼痛の遷延化に関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Gfap-Creマウスの繁殖が出来なかったが、別のアプローチにより慢性疼痛時において末梢神経系グリア細胞と感覚神経との相互作用に関与する因子の一つを同定することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
Hhシグナルが末梢神経系グリア細胞と感覚神経系の相互作用の因子として機能し、疼痛を惹起していることが示唆されたが、どのような因子や環境が末梢神経系グリア細胞においてShhの発現を上昇させるのかは不明である。また、Shhは主にGFAPおよびs100b陽性のグリア細胞で発現上昇しているが、これら細胞がどのような性質を持つのか明らかではない。今後としては、第一に、どのような因子がグリア細胞においてShhの発現を誘導するのか、初代培養を用いて検討する。特に損傷後の感覚神経もしくはマクロファージなどの免疫細胞から分泌される因子を中心に検討を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた実験とは別のアプローチを行ったため、差額が発生した。差額分は次年度の培養実験に使用する物品費として用いる予定である。
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Research Products
(1 results)