2023 Fiscal Year Annual Research Report
神経障害性疼痛に伴う脊髄後角ニューロン変調におけるD体セリンの作用
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21K09004
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 健二 東海大学, 医学部, 教授 (10317779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 慢性疼痛 / 脊髄 / NMDA受容体 / グルタミン酸 / Dセリン |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛は発症機序が不明なため、根本的な治療法が無く臨床上重大な問題となっている。神経障害に伴うアロディニアや痛覚過敏などの発症にN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体活性化が深く関与しているが、そのNMDA活性化メカニズムは不明である。申請者はこれまでに、グリシン結合部位内因性コアゴニストであるDセリンはNMDA受容体の活性化を制御すること、生理的状態では神経細胞で生成されるDセリンは、生体の病態変化によってアストロサイトにおいても生成されること、などを明らかにした。神経組織の障害による持続性の侵害刺激により脊髄後角の神経細胞で自発発火の増大、異所性の異常発火が生じ、この脊髄後角での過敏化にはNMDA受容体拮抗薬により減弱されることが知られる。すなわち、末梢から強い侵害刺激が脊髄後角神経細胞に入力されると、 NMDA受容体活性亢進を介する過敏化が生じ、この過敏化はアロディニアや痛覚過敏などの発症に関わることが知られている。申請者は、フロイントコンプリートアジュバント(Freund's Complete Adjuvant)を後肢足蹠の皮下に注入し作成した持続性炎症疼痛モデルラットの脊髄後角におけるシナプス間隙液を脊髄内マイクロダイアリシス法により回収し、ホルマリン刺激の摂動により慢性疼痛の発症時にはNMDA受容体アゴニストのLグルタミン酸遊離量が増加し、維持期にはDセリン遊離量が増加することが示された。以上の先行研究などから、慢性疼痛の維持期における脊髄後角で活性化アストロサイト由来DセリンがNMDA受容体機能を亢進し、脊髄後角ニューロンを過敏化し、アロディニアや痛覚過敏などの病的な疼痛維持メカニズムの一因となっているとの仮説に至った。
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