2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of sepsis-induced cerebral dysfunction in syndecan knockout rat model
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21K09042
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中島 芳樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00252198)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グリコカリックス / シンデカン-1 / 敗血症性ショック / 血管透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症性脳症における血管内皮グリコカリックス(eGCX)の傷害とそれに伴う脳障害のメカニズムを解明するための研究である。具体的には LPS(リポ多糖類)投与による敗血症性ショックモデルにおいてSyndecan-1ノックアウトラットを作成して敗血症性ショックモデルにおいて血管内皮傷害が発生するのか、また違いが血管透過性の亢進などに影響するのかを検証する。野生株およおよびシンデカン-1ノックアウトラットにイソフルラン麻酔下で気管切開を行い人工呼吸器管理とし、大腿動静脈に カニュレーションを行う。観血的動脈圧をモニターしながら、各群10匹にLPS10 mg/kgまたは生理食塩水の投与を行う。初年度では血行動態の 変化と5時間後の生存率を比較する。また、LPS投与による臓器障害、組織像(電子顕微鏡によるEGCXの脱落の程度)を明らかにし、血液中に遊離したEGCX層の構成成分であるヘパラン硫酸、シンデカン-1をELISAによって測定する。炎症のマーカーや組織障害のマーカーとなるIL-6、 TNFα、HMGB1を測定、免疫染色によってiNOS の発現を比較し敗血症による炎症の活性化、組織損傷の程度を評価しシシンデカン-1ノックアウト による影響を検証する。2年目以降に関してはMRI撮影とEvance blueで脳における血管透過性亢進及び浮腫の程度を評価する。その上で近年の研究報告や予備的な検討からeGCXの保護作用や再生を促進する物質として候補に挙がっているEGCXの主な構成成分であるヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸の補充療法と赤血球などの多く含まれ、細胞表面のカベオラでEGCXの再生に関わるとされるスフィンゴシン1リン酸(S1P)の投与 についてのeGCXに対する保護効果および再生への関与の程度を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最大の問題はシンデカン-1ノックアウトラットの作成に時間がかかっていることである。PCRでは該当する遺伝子の除去は確認されているが、ウエスタンブロット法ではシンデカン-1のバンドが発現しており、試みにLPS投与における野生株との比較では血管内皮傷害に差が認められなかった。従来の研究では心臓の毛細血管におけるeGCXの観察や血管透過性の検証のための方法についてはすでに実証できているのでノックアウトラットの作成が今後軌道に乗れば一気に研究は進むと考えている。今回ノックアウトラットの作成と並行して脳血管や肺におけるeGCXを観察できる方法も確立できたため他の実験系を組み立てる時には非常に役立つ技術を習得したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、脳血管や肺の毛細血管を観察する技術が今回の研究を通じて確立できたため、我々は人工心肺を用いた炎症反応の研究でその技術を応用して水素ガスが人工心肺導入中の炎症反応を低減して血管内皮の保護に寄与することを見出している(Hydrogen attenuates endothelial glycocalyx damage associated with partial cardiopulmonary bypass in rats. Iwata H, et al. PLoS One. 2023 Dec 19;18(12):e0295862. doi: 10.1371/journal.pone.0295862. eCollection 2023. PMID: 38113214 )。ノックアウトラットの作成により、特に循環動態の調節がノックアウトマウスを用いるよりもより臨床に近い形で可能になるため、今後もその作成には注力していきたい。また近年、血管透過性について従来から注目されていたVE Cadherinへの作用にDPP-4阻害薬などが関与することが発表されており、その観点からも脳血管を中心とした敗血症性脳症の病態解明を進めたい。
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Causes of Carryover |
ノックアウトラットの作成がうまくいかず、野生株ラットの購入を見送ったことや試薬の購入に至らなかったことが次年度使用額が生じた主な理由となる。
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Research Products
(2 results)