2021 Fiscal Year Research-status Report
低代謝療法の基盤となる脳から末梢組織への休眠シグナルの解明
Project/Area Number |
21K09045
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大鶴 繁 京都大学, 医学研究科, 教授 (60437225)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂川 玄志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70710250)
高谷 悠大 京都大学, 医学研究科, 助教 (60828903)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 冬眠 / 休眠 / 心筋 / 低代謝 / 救急医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、天然由来の省エネシステムである休眠から低代謝耐性の原理を学び人間に応用することである。そこで、3年をかけて低代謝療法の基盤となる脳から末梢組織への休眠シグナルの解明に挑戦する。そのために、最も代謝が高い臓器のひとつである心臓に注目し、休眠中の心臓に影響を及ぼす因子を同定することを目指す。心機能や心臓の代謝に影響を及ぼす因子を検証していく上で、心機能をインビトロで評価できることは大きなアドバンテージとなる。そこで、本研究の計画は次の4つのステップから構成した:①インビトロ代謝評価系の開発、②休眠動物から体液の採取、③心筋トランスクリプトームから休眠遺伝子群の検索、④候補分子のインビトロ評価系における検証。 本年度は主に①と③を推し進めた。①に関しては、C57BL/6JマウスのES細胞から心筋分化できる系を整備した。今後は他の系統のES細胞でも安定した分化誘導ができることを確認する。また、マウスの心筋からの初代培養を行うために、成体マウスから心筋細胞を単離する方法を樹立した。今後、単離した心筋の複数日にわたって維持培養できることを検証する。さらに、拍動する心筋を培養したまま動画撮影できる顕微鏡システムの整備を行った。③に関しては、絶食性休眠とQ神経誘導性休眠のマウスから心筋細胞を単離し1細胞遺伝子発現解析のためのシークエンスを行った。今後、解析を進め、休眠特異的に変化する遺伝子ネットワークの候補を得たい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、病院内でクラスターが発生したり、研究者が濃厚接触者となるなど、一定の期間自宅待機等を余儀なくされ、理研での進捗状況に比し、京大側ではやむを得ず当初の研究計画よりも進捗状況が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
①インビトロ代謝評価系の開発(高谷・京大、砂川・理研が担当;令和3~4年度):冬眠マウスモデルから採取した検体に含まれる休眠誘導分子を感度よく検出するために、インビトロで機能・代謝を検出できる心筋培養系を確立する。心筋はマウスES細胞から心筋分化、あるいは成体マウスの心筋の初代培養を用いる。心機能は動画撮影を用いた拍動数検出、あるいは培地分析(グルコース消費量・乳酸排出量)やフラックスアナライザーによる酸素消費量で評価する。 ②休眠動物から体液の採取(砂川;令和3~4年度):飢餓誘導性休眠(FIT; Fasting-induced torpor)ならびにQ神経誘導性休眠(QIH; Q neuronsinduced hypometabolism)のマウスから血液や髄液をサンプルし、休眠誘導物質を含むライブラリを作成する。 ③心筋トランスクリプトームから休眠遺伝子群の検索(砂川;令和3~4年度):FITやQIHに誘導した際の心筋の遺伝子発現解析を行い、FITとQIHに共通して活性化される分子ネットワーク(遺伝子発現あるいは代謝カスケード)を検索し、心筋が休眠特異的に発現を変化させる遺伝子をあぶり出す。 ④候補分子のインビトロ評価系における検証(高谷;令和4~5年度):①で確立したインビトロ代謝評価系を用いて、②で得られた体液サンプル(髄液・血漿など)や、③で候補となった分子機構を摂動する薬物を用いて、心筋細胞がどのような影響を受けるか検証する。最終的に、心筋細胞の代謝を細胞障害を生じずに、可逆的に低下させられる分子や、関連する機構を見出すことを目指す。
|
Causes of Carryover |
昨年度は京都大学で用いる心筋培養のためのインキュベーターが老朽化しており、同機器の更新と心筋初代培養を行うためのランゲンドルフ灌流機器一式を計上していたが、コロナ禍の影響で実験の進捗状況が思わしくなく、購入を見送った。今年度に購入を行う予定である。 消耗品としては、京都大学の方で毎年の動物関連の消耗品費用、また生化学や培養実験費用を計上している。さらに理研の方では分担者が生化学実験を行うための諸費用を計上している。 日進月歩の領域であり、コロナ禍ではあるが国内・外国の学会・研究会での情報収集を要するため、国内・外国旅費を計上した。 また論文を出版するため、英文校正ならびに出版料を計上している。
|
Research Products
(11 results)