2023 Fiscal Year Research-status Report
コロナ時代の救急・災害現場における非接触型健康情報共有ツールの有用性に関する研究
Project/Area Number |
21K09046
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 智彦 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50456985)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島崎 淳也 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (40528767)
中尾 俊一郎 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (80834150)
松原 庸博 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70747154) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 健康情報共有ツール / 医療情報 / 既往歴 / 救急活動記録 / 避難所開設 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究として、豊中市消防局の協力を得て、アレルギー歴、内服情報について明確に記録できるように救急隊活動記録の様式を一部修正していただき、管内の救急活動記録の2022年分を収集した。健康情報共有ツールの普及が救急搬送の円滑化(病歴把握がスムーズに行える)することを示すためには、評価項目となる「既往歴・内服薬・アレルギー情報」について「あり、なし、聴取できず」とコード化して記録を行うことが必要であることを明らかにした。 健康情報共有ツールがあるとき、ないときにおける救急隊の情報収集時間に関するシミュレーションを行った。サンプルが36事例と少なかったため、情報収集時間に有意差を認めなかったが、健康情報共有ツールがある方が救急隊の情報収集時間が短縮傾向にあることを示した。 近距離無線通信(near field communication: NFC)システムを用いることで健康情報共有ツールの多言語化が可能であることがわかり、2023年5月に開催されたG7広島サミットのメディアセンターに訪れる方々にピンバッジ方のタグを配付し、医療サービスの一端を担うと共に、大規模イベント時の医療体制における多言語対応についてアンケート調査を行った。 研究2)避難所開設時における健康情報共有ツール情報の有用性に関する研究として、健康情報共有ツールに登録された情報を避難所の受付でNFCのシステムを用いてスキャンし、集計するアプリケーションを開発した。2023年11月に大阪市東淀川区内で開催された避難所開設訓練において、避難所開設時の健康情報共有ツールのスキャンによる受付シミュレーションを実施し、従来の手書きによる受付よりも有用で便利であったというアンケート結果を得た。同趣旨は第28回日本災害医学会総会・学術集会において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究については、豊中市消防局との協力体制により、救急活動記録の後ろ向き調査のデータ提供の解析も終え、前向き調査についても2022年の一年分の集計ができている。前向き調査の解析を行うステップであり、当初の予定通り概ね順調である。追加で行っている健康情報共有ツールがあるとき、ないときにおける救急隊の情報収集時間に関するシミュレーションについては、コロナ禍であり、救急隊の協力を得ることが困難であったため、救急救命士養成課程の学生に協力をいただくようにしたが、1校の協力だけでは、サンプル数が少なく、有意差を示すことができなかったため、追加で2校の協力を調整中での追加を予定であり、研究機関の延長を申請させていただいた。 研究2)避難所開設時における健康情報共有ツールの有用性に関する研究については、避難所開設訓練がコロナ禍を理由に中止となる地域があり、東淀川区内において十分な周知ができなかった。2023年中に協力を得られた地域が一つにとどまってしまったが、有用なアンケート調査を行うことができた。NFC版救急タグのシステム開発について、研究班の意見を速やかにアプリに反映できる体制が整ったため避難所での集計管理システムの開発に向けて体制を整備できている。PC版での集計および実地検証の体制について、令和5年度にずれ込んでしまったことは研究遂行に予期していなかった遅れであり、引き続き、ブラッシュアップのための検証、修正期間として令和6年度にずれ込んでしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究については、令和4年度、令和5年度の研究結果を広く報告し、健康情報共有ツールの普及の効果検証が行えるような体制を消防本部(局)に提案していく。効果検証が行える体制となれば、消防本部(局)も多忙な救急活動において、救急隊がスムーズに活動出来ること、傷病者となり得る市民が救急隊のサービスを十分に受けることにつながるため健康情報共有ツールを導入することにつながると考えられる。 また、健康情報共有ツールがあるとき、ないときの状況設定シミュレーションについて、追加検証を行い、健康情報共有ツールが地域に導入された場合の救急隊の情報収集時間が短縮できる可能性を示し、より地域に健康情報共有ツールを浸透させる根拠を示していく予定である。 さらに、NFC版を作成する過程で多言語対応が可能であることが示されたため、今後は外国人労働者が多く働く地域で、雇用主の企業等とも意見交換をかさね、我が国に労働力を提供してくださる方々に対して、健康異常時のサポートを行いやすい体制についてご本人が健康情報共有ツールを持つこと、地域がその情報を活用するシステムについて検討して行く予定である。 研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究については、東淀川区に加え、大阪府豊能町をはじめ広い地域で避難所訓練に参加することで、NFC版救急タグを用いた避難所での集計管理システムの評価、検証を引き続き継続し、実用性のあるシステムとして運用可能な方策を検討する。また、大阪大学内で避難所について調査研究している人間科学研究科と意見交換し、災害時により被災された方のサポートとなるような健康情報共有ツールを用いた避難所の受付、情報共有システムの開発に取り組み、避難所開設に求められるニーズの調査や必要項目について検討し社会に提案していく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究および、研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究のいずれに於いてもCOVID-19の蔓延による影響で救急隊の協力が得られにくくなったこと,避難所開設訓練の実施が減少したことの影響を受けて研究機関が延長せざるを得なかったことが理由となります。 使用計画 研究1)令和5年度の研究結果を2024年7月に開催される学会報告、論文掲載するため必要経費して使用いたします。また、健康情報共有ツールがあるとき、ないときの状況設定シミュレーションについて、サンプル数を増やすために追加検証を計画しており、2024年6月に追加検証を行う予定としました。研究協力者への謝礼等の支出をはじめ、必要経費として使用します。NFC版の健康情報共有ツールの多言語対応化の可能性から、今後の用途拡大として外国人労働者がターゲットとなると考えられたため、情報収集を行う予定としました。研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究については、東淀川区に加え、大阪府豊能町等の避難所訓練に参加し、効果検証すること、システムのブラッシュアップの経費が必要となります。また、2025年3月に開催される日本災害医学会総会学術集会で報告を予定しております。
|
-
-
-
-
[Presentation] Questionnaire survey of media representatives attending the G7 Hiroshima Summit2023
Author(s)
Tomohiko Sakai, Shunichiro Nakao, Takahito Kawauchi, Haruna Maebe, Kinuko Miyazaki3), Saika Nishioka, Mana Minamida, Kouki Kamimura, Yasuaki Sanada, Keizo Kawata, Jun Oda
Organizer
第51回日本救急医学会総会・学術集会 JAAM-EMS Asia international Poster Session
Int'l Joint Research
-