2022 Fiscal Year Research-status Report
経時的遺伝子発現解析を用いた敗血症慢性重症経過の病態解明と予測モデル構築
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21K09067
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
内御堂 亮 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (70883643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 嵩矩 東京医科歯科大学, M&Dデータ科学センター, 准教授 (80753756)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重症新型コロナウィルス感染症による敗血症 / 代謝障害の経時的な解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は前向きに臨床データを取得し専用サーバーにデータベースとして格納するシステムを構築した。病院電子カルテ専用のサーバーと集中治療室専用部門システム専用のサーバーから本学の臨床データウェアハウスに送信されたデータを、本研究用サーバーに送信しかつ解析を実施するために必要なデータクリーニングが実施される一連の流れを、半自動化するシステムを構築した。本研究の目的である経時的な遺伝子発現解析を実施する上で、臨床データの経時データの取得は必須である。一方集中治療室患者に関連する経時データはデータ量が多く、かつ種類も莫大という特徴があり、コンピューターによるデータ送受信・データ解析の半自動化は、本研究を持続的にかつ円滑に行うためには重要な点であった。よって、本システムを2022年度に構築できたことは、本研究の目的を達成するための重要なステップをクリアしたことになる。 加えて、2022年度は重症新型コロナ肺炎患者の血漿を利用した血中代謝物の網羅的な解析(以下、メタボローム解析)を行った。2021年度は新型コロナウィルスによるパンデミックの影響で予定通り患者検体が集まらなかったため、本研究課題である敗血症患者の遺伝子発現解析の基礎となる、重症新型コロナ肺炎により敗血症を呈している患者群に対してメタボローム解析を行った。解析結果から、たとえ単一ウィルス(新型コロナウィルス)でかつ単一の感染臓器(肺)であっても、代謝経路の障害は患者ごとに経時的に異なることが明らかになった。これは、2023年度実施予定の敗血症患者を対象とした経時的な遺伝子発現解析の基礎となるデータなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度から開始された本研究だが、2021年度は新型コロナウィルス感染症によるパンデミックの影響で、医療現場は混乱し、当初の想定と異なり、集中治療室は重症新型コロナウィルス感染症による敗血症を呈した患者の対応に主に行った。新型コロナウィルス感染症患者から遺伝子発現データを取ることは研究室の感染対策機能の制限から困難であったため、遺伝子発現解析の基礎データとして、血漿中の代謝産物の解析を重症新型コロナウィルス感染症患者の血液検体に対して行った。この代謝産物の解析は遺伝子発現解析の基礎となると同時に、いずれは遺伝子発現データと統合して解析することでより敗血症病態の解明を進めることができる。
実際の解析結果として、特定のアミノ酸や赤血球産生に関連する代謝経路が、死亡患者で特に障害されていることや、集中治療室に長期に滞在する患者は早期に病状が改善して集中治療室から退室する患者と比較して、炎症が持続しそれに伴って脂質代謝経路が障害され続けていることも分かった。
また、2022年度は2021年度から引き続き、臨床データ解析のためのデータ運用プラットフォーム作成を行った。本研究の目的である経時的な遺伝子発現解析を実施する上で、臨床経時データの取得は必須であり、コンピューターによるデータ送受信・データ解析の半自動化は、本研究を持続的にかつ円滑に行うためには重要な点であった。集中治療室患者に関連する経時データはデータ量が多く、かつ種類も莫大という特徴があり、コンピュータープログラミングを利用して、データ運用プラットフォームを整備する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、集中治療室に入室するような重症の感染症患者さんにおいて、遺伝子発現の変動が経時的にどのように起こっているかをネットワーク分析や深層学習など高度な手法を使って解析することである。しかし、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックの影響で、患者検体を取得することが非常に難しくなり、2021年度、2022年度は当初の計画通りには進まなかった。今後の方針として、患者血液検体を持続的かつ安定的に採取し、管理する。そして血液検体から遺伝子発現情報としてのRNAを抽出し、次世代型シークエンサーにより遺伝子発現定量を行い、その結果をデータサイエンスの手法で解析する、ということを想定している。
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Causes of Carryover |
2020年、2021年度は新型コロナウィルス感染症によるパンデミックの影響により、本学附属病院の集中治療室は重症新型コロナウィルス感染症患者を中心とした診療を行なった。よって2022年度に解析する予定であった検体を2021年度に収集することができなかった。2023年度には、2022年度に使用しなかった研究費も併せて、本研究の目的である敗血症患者の経時的な遺伝子発現解析を実巣するために使用する予定である。
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