2021 Fiscal Year Research-status Report
The mechanisms of brain injury caused by cerebral ischemia/reperfusion via TRPM2 activation
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21K09081
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
戸田 雄大 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (30573852)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRPM2 / 脳虚血再灌流障害 / 酸化ストレス / 脳梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞の治療において、脳血管に詰まった血栓を溶かす方法が救命、およびその予後改善に効果がある。しかし、血栓溶解後に遅れたタイミングで脳組織障害が起きる「脳虚血再灌流障害」が、問題となっており、かつ改善の余地が残されている。脳虚血再灌流障害にはTRPM2(活性化しすぎると生体に炎症などを引き起こすCa2+チャネル)が関わっている。 この研究は、脳虚血再灌流障害にTRPM2がどうやって関わるかを研究し、明らかにすることを目的としている。 今年度は、まず脳虚血再灌流障害における、TRPM2活性化を介した脳の組織障害に関連する可能性の高い細胞種の探索を行った。WTおよびTrpm2欠損マウス由来のミクログリアを単離・培養し、①過酸化水素(H2O2)を添加、あるいは②NADPH oxidase(NOx:H2O2を産生する生体内の酵素)を活性化させることによる内因性にH2O2を増加させる実験を行った。その結果、H2O2を添加した群ではTRPM2を介したCa2+の増加は見られず、NOxを介してH2O2を増加させることによりTRPM2を介したCa2+流入が認めらた。これについては、当初の予備検討の結果に確証を得ることができた。興味深いことに、H2O2を添加する実験、およびNOxを活性化させる実験共に、H2O2が存在する点に違いはない。従って、ミクログリアのTRPM2を介した脳組織障害には、活性化したNOxによる、H2O2を細胞内に取り込む何らかの因子の活性化が関与することが強く示唆された。次年度以降、その因子が何かを明らかにするとともに、ミクログリア以外の細胞種についても同様の検討を行う。また、最近ミクログリアを特異的に阻害する化合物が中枢神経系の研究でよく使用されることがわかり、本研究においてもモデル動物を用いた実験で、ミクログリアの脳虚血再灌流障害への関与について、明確にする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、WTおよびTrpm2欠損マウス由来のミクログリアを単離・培養し、①過酸化水素(H2O2)を添加、あるいは②LPS/IFNγを用いた、NADPH oxidase(NOx)を活性化させることによる内因性にH2O2を増加させる実験を行った。その結果、H2O2を添加した群ではTRPM2を介したCa2+の増加は見られず、NOxを介してH2O2を増加させることによりTRPM2を介したCa2+流入が認めらた。これについては、当初の予備検討の結果に確証を得ることができた。両群共に、H2O2が存在する点に違いはないため、ミクログリアのTRPM2を介した脳組織障害には、活性化したNOxによる、H2O2を細胞内に取り込む何らかの因子の活性化が関与することが強く示唆された。次年度以降、その因子が何かを明らかにするとともに、ミクログリア以外の細胞種についても同様の検討を行う。因子の候補としては、近年、アクアポリン(AQP)のいくつかのサブタイプが、水のみならずH2O2透過性を有することが明らかにされている。次年度以降は細胞実験について今年度と同様の条件で、また脳虚血再灌流障害モデルマウスを作成して、AQPの発現変化を詳細に検討する。また、最近ミクログリアを特異的に阻害する化合物としてPLX3397が中枢神経系の研究でよく使用されることがわかった。これは本研究の遂行にあたり非常に画期的であり、モデル動物を用いた実験において、PLX3397を前処置し、検討することでミクログリアの脳虚血再灌流障害への関与について、明確にすることができると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、脳虚血再灌流障害に関連する可能性の高い各細胞種、およびそれらにおけるTRPM2活性化に関与する因子の解明について遂行する。 細胞実験においては、ミクログリア以外の細胞種についても同様の検討を行う。脳虚血再灌流障害における脳組織障害に関連が深いと考えられているミクログリア、神経細胞、マクロファージおよび単球についてTRPM2活性化の関与を検討する。また、ミクログリア、および他の細胞腫におけるAQPの関与について検討する。具体的には、AQP3の発現量をreal-time RT-PCR法により定量する。 最近、ミクログリアを特異的に阻害する化合物としてPLX3397が中枢神経系の研究でよく使用されることがわかった。本研究において、PLX3397を前処置し脳虚血再灌流障害モデルマウスを作成し、脳組織障害のレベルをTTC染色、神経症状スコアにより測定し検討することでミクログリアの脳虚血再灌流障害への関与について、明確にする。さらに組織中のNOx、AQPなど、申請時に想定された脳虚血再灌流障害に関連する因子について、RNA、タンパク質レベルでの発現変動を測定する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたものは、すべて消耗品である。 今年度は現有の消耗品で遂行できた実験があり、かつ消耗品の使用期限を勘案し、今年度の購入を留保したものが存在するため。 次年度助成金は、当初計画通り、マウスの維持・継代、組織培養関連、ミクログリア阻害剤および血栓溶解薬等、本研究を遂行するにあたり必要な消耗品の購入に使用する。
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