Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒住 和彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20509608)
畝田 篤仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (20865927)
藤井 謙太郎 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40799318)
石田 穣治 岡山大学, 大学病院, 助教 (90771949)
大谷 理浩 岡山大学, 大学病院, 医員 (60902989)
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Outline of Annual Research Achievements |
グリオーマは予後不良な脳腫瘍であり, その中で最も悪性度の高いグリオブラストーマの5年生存率はわずか10%である. 近年, 腫瘍細胞でのみ生じるsomatic(体細胞)遺伝子変異の解析が進んでいるが, 患者が生まれながらに持ち, 体内のすべての細胞で生じるgermline(生殖細胞系列)バリアントについては未だ不明な点が多い. 本邦で開発され, ノーベル賞にも輝いた免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする様々な免疫療法が実臨床に応用されているが, グリオーマに対しては有効性を示せていない. 免疫療法の有効性を決定する要素の一つとして, 腫瘍の免疫微小環境が注目されているが, 体内の全細胞に存在するgermlineバリアントは, 腫瘍細胞のみならず免疫微小環境にも強い影響を与える可能性がある. しかし, germlineバリアントと, グリオーマの予後や免疫微小環境との関連に着目して解析を行ったという報告はこれまでにほとんどない. 本研究では, TCGAのグリオーマ患者約のゲノム配列データを用いて, PIK3R1 Met326Ile germline変異がグリオーマの発生率, 予後, さらには免疫微小環境に与える影響について解析を行う. PIK3R1 M326Ileのホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)は, 予後が悪い傾向はあるが, 3群解析で有意差はつかず(Homo MT vs WT + Hetero MTで比較すると有意差あり), BLACK OR AFRICAN AMERICANで有意に多いことがわかった. また, 人種ごとに解析した場合も, PIK3R1 M326IleのHomo MTは, 予後が悪い傾向はあることがわかった. 人種ごとに健常人とGBMで比較すると, PIK3R1 M326Ile変異は, 疾患発症リスクには関与しないということがわかった. ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)では, MTAPやIFNの変異が多く, PIK3R1 M326Ile変異が免疫微小環境に影響を与える可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NCBI(アメリカ国立生物工学情報センター)が運営するヒトゲノムデータベースであるdbGAP(the Database of Genotypes and Phenotypes)にて申請を行い, TCGA(The Cancer Genome Atlas)のグリオーマ患者約1000例(グリオブラストーマ:GBMが406例, 低悪性度グリオーマ:LGGが516例)のゲノムデータ(BAM file)を取得した. このゲノムデータは一般には非公開であるが, 当施設はアクセス権限をTCGAの運営元であるアメリカ国立がん研究所に申請, 取得済みである. GBMのBAMファイルからPIK3R1 Met326Ile変異を有する患者を抽出し, バイオインフォマティクス的手法を用いて, 変異型群が野生型群と比較してどのような特徴を持つのか解析した. 解析には, 東京大学医科学研究所Shirokaneスーパーコンピューターを使用した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後のプランとして, TCGA-LGGでも解析を行う予定である. TCGA-GBMで, Homo MTは予後不良の傾向があった. Homo MTで発現が変動している遺伝子(mRNA)を抽出し, パスウェイ解析 (GSEAやmetascapeなど), Cybersortなどのデジタルサイトメトリーを行う予定である.
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