2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of new therapy for H3K27M mutant glioma
Project/Area Number |
21K09101
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
阿部 竜也 佐賀大学, 医学部, 教授 (40281216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増岡 淳 佐賀大学, 医学部, 准教授 (50359949)
中原 由紀子 佐賀大学, 医学部, 講師 (50380770)
伊藤 寛 佐賀大学, 医学部, 助教 (50795375)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | brain tumor / DIPG / H3F3A遺伝子 / K27M変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫が治療抵抗性を獲得する原因として、さまざまな要因が考えられているが、なかでも脳幹など中枢神経の中心部位に発生する腫瘍は、手術も困難であり極めて難治の腫瘍である。その原因遺伝子としてH3F3A遺伝子のK27M変異を有することが分かってきており、この遺伝子異常を持つ腫瘍の研究は精力的に行われ、さまざまな遺伝子異常、エピゲノム異常が報告されている。そこで、我々が患者検体から樹立したK27M異常を有する幹細胞株(Saga027)を用いて検討したが、in vitroで既存の治療法では全く歯が立たず極めて治療抵抗性であった。このような腫瘍に対して、近年ドーパミンD2受容体(DRD2)拮抗薬であるONC201が注目を集めている。ONC201は、DRD2拮抗作用に加えmitochondrial caseinolytic protease P(ClpP)作動薬でもあり、腫瘍細胞をアポトーシスへ導く低分子化合物である。成人再発H3K27M変異神経膠腫患者対して1週に1回ONC201を投与したところ、ONC201単剤療法は忍容性も良好で、腫瘍縮小効果も見られた。また、臨床では腫瘍細胞でドーパミンD5受容体の発現が高いとONC201への反応性が悪いことも報告されている。そこで、本研究ではこのような幹細胞株に対して、その耐性のメカニズムを解析するとともに、H3K27M変異に関連する作用機序の異なるいくつかの分子標的薬を併用し、これまでにない新しい有効な治療法の開発を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の研究室で保有する様々な遺伝子プロファイルを持つ脳腫瘍幹細胞や細胞株を用いて既存治療薬やONC201での増殖抑制効果を検討した。その結果H3K27M変異を有するSAGA027はあらゆる既存の治療薬に抵抗を示した。ONC201を様々な細胞で検討したところ、細胞の特性によって感受性が異なることが分かった。また、ONC201はSAGA027の腫瘍の増殖をある程度抑制するも完全に抑制するには至らなかった。一方、ヒストン脱メチル化酵素(KDM)は、ヒストンのメチル化リシン残基を脱メチル化する反応を触媒する酵素で、エピジェネティックに遺伝子の発現を制御している。KDMは、フラビン依存性の脱メチル化酵素(LSD1)とJumonji C-domainを含む脱メチル化酵素(JHDM)の二つのファミリーに分類される。LSD1およびJHDMのアイソザイムのいくつかは,がんなどの病態に関与することも報告されており、次世代エピジェネティックドラッグとして期待されている。近年、LSD1・HDAC 阻害剤の一種であるCorinが、クロマチンのre-programingを生じ、DIPG細胞の分化を誘導し、増殖を抑制する可能性が分かってきた。 そこで本研究では、特にヒストンH3K27M変異幹細胞株を用いて、脳腫瘍幹細胞のエピジェネティクス機構の解明を行い、脳腫瘍幹細胞の分化誘導療法応用へと展開するための研究基盤を確立することで、新たな治療法の開発を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれらH3K27を標的とする薬剤を用いた治療効果を検討するとともに、ONC201を中心とした薬剤耐性のメカニズムを解析し、分子標的薬を併用することでより効果的な治療法の開発を試みている。 ① 腫瘍幹細胞の遺伝子表現型による、ONC201の薬剤反応性の特徴 ② ONC201耐性株の樹立とその分子機構の解明 ③ ドーパミンD5受容体導入細胞におけるONC201の薬剤反応性の検討 ④ 腫瘍組織、間質細胞の多様性・不均一性による薬剤応答性の相違 ⑤ 低酸素、サイトカインなどの様々な細胞環境ストレスが分子標的治療抵抗に及ぼす影響 ⑥ 遺伝子変異が異なる腫瘍幹細胞で様々な薬剤がゲノム・エピゲノムに及ぼす影響 ⑦ ONC201とのEZH2阻害剤やLSD1・HDAC 阻害剤などとの併用効果と遺伝子解析 ⑧ 脳腫瘍脳内移植モデルでのONC201とEZH2阻害剤やLSD1・HDAC 阻害剤などとの併用効果 などについて検討し、新たな知見を報告したい。
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Causes of Carryover |
研究計画に沿って、in vivoでの解析に費用を要することから、次年度に繰り越し施行することにした。
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Research Products
(3 results)