2023 Fiscal Year Research-status Report
頚動脈石灰化粥腫安定機構の多角的エピジェネティック制御と分子間クロストークの探究
Project/Area Number |
21K09107
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
片野 広之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (30295612)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 頸動脈狭窄症 / 頸動脈プラーク / 石灰化プラーク / ゲノム / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ATAC-Seq, ChIP-Seq, Hi-C法を用い、Caスコアを基準としてヒト頚動脈で遺伝子の相互作用探求するためオープンクロマチン領域の網羅的解析によるクロマチン・アクセシビリティの 高・低石灰化粥腫群での差異についてATAC-Seqを行うため、これまでに異なる複数の検体で二度に渡ってvalidationを反復したが、いずれもATAC反応が弱くバックグラウンドも高いため、ATAC-Seq本試験への移行を断念した。しかし、エピゲノムの別制御として高感度RNA-SeqであるSMART (Switching Mechanism At 5’ End of RNA Template)-Seq v4 (Ultra Low Input)を行い、Bioinformatics Data MiningによりlncRNA発現の差異を調べたところ、全発現転写産物は229647, 60715遺伝子であった。フィルターで低品質・低発現のも の(154,280 transcripts, 38,980 genes)を除外し、この中から両群のlog2CPM発現の平均の差異が|log2>1かつp<0.05 であるlncRNAを抽出すると高石灰化プラー ク群では15遺伝子、低石灰化プラーク群で33遺伝子が抽出された。前者はcell proliferation, invasionを抑制する機能を示すlncRNAが多く抽出されたのに対し、後者では促進する傾向の遺伝子が多く抽出された。また、Caスコア200-500の中等度石灰化プラークについて、低石灰化、高石灰化プラークとともにSMART-Seqを行ったところ、中石灰化プラークにおいても低石灰化プラークと比較して、炎症および細胞活性に関する遺伝子の抑制が見られた。中石灰化と高石灰化プラーク間でも同様の差異が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度には異なる複数の検体で二度に渡ってvalidationを反復したが、いずれもATAC反応が弱くバックグラウンドも高いため、ATAC-Seq本試験への移行を断 念した。しかし、エピゲノムの別制御として高感度RNA-SeqであるSMART (Switching Mechanism At 5’ End of RNA Template)-Seq v4 (Ultra Low Input)を行 い、Bioinformatics Data MiningによりlncRNA発現の差異を調べたところ、全発現転写産物は229647, 60715遺伝子であった。フィルターで低品質・低発現のも の(154,280 transcripts, 38,980 genes)を除外し、この中から両群のlog2CPM発現の平均の差異が|log2>1かつp<0.05 であるlncRNAを抽出すると高石灰化プラー ク群では15遺伝子、低石灰化プラーク群で33遺伝子が抽出された。前者はcell proliferation, invasionを抑制する機能を示すlncRNAが多く抽出されたのに対 し、後者では促進する傾向の遺伝子が多く抽出された。平成5年度には、Caスコア200-500の中等度石灰化プラークについて、低石灰化、高石灰化プラークとともにSMART-Seqを行ったところ、中石灰化プラークにおいても低石灰化プラークと比較して、炎症および細胞活性に関する遺伝子の抑制が見られた。中石灰化と高石灰化プラーク間でも同様の差異が見られた。現在詳細な解析が進行中であり、本研究全体としては概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、頚動脈内膜剥離術で摘出した頚動脈粥腫をホルムアルデヒドで固定し、超音波破砕によりクロマチンを断片化した後、制限酵素でゲノム切断して DNAリガーゼで近接領域を結合する。ペアエンドシーケンスにより連結断片の両端の読み取りから、もともと近接していた配列を同定する。このゲノム近接性を 測定することで結合部位間でコンフィグを関連づけ、さらに染色体グループに分類し染色体スケールでscaffoldに並び替え、配列情報を補完するゲノム高次構造 情報を得る。コンタクトマップを作成し、TAD(Topography associated domain)を検出し、高・低石灰化粥腫群でのTAD変化と周辺遺伝子発現の変化の差異を明らかにする。また中石灰化プラークの遺伝子発現について、低石灰化プラーク、高石灰化プラークと比較して詳細な解析、データマイニングを行い、これまでのmRNA, microRNA, DNAメチル化、DNA変異および令和4年度のlncRNAの結果と合わせて、安定化・不安定化に関する分子間 の総合連関を総括する。
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Causes of Carryover |
令和5年の国内学会および国際学会に伴う経費等への使用を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響で、学会がWeb開催やHybrid開催とな り、当該経費に関わる費用の一部を、令和6年度に持ち越す必要が生じたため。
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