2021 Fiscal Year Research-status Report
膠芽腫のアクアポリン1阻害による腫瘍進展制御機序の解明と阻害剤の臨床への展開
Project/Area Number |
21K09144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大石 正博 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (50646693)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクアポリン1 / AQP1 / AQP1阻害剤 / 膠芽腫 / GBM |
Outline of Annual Research Achievements |
選択的水チャネルであるAquaporin (AQP) 1の発現は神経膠腫の腫瘍悪性度と相関することが知られている。神経膠腫のうち最も悪性度の高い膠芽腫におけるAQP1の発現の意義については、腫瘍細胞の主なエネルギー源であるグルコースの代謝(解糖系)により乳酸アシドーシスが生じ、それによる細胞性浮腫を緩和するためにAQP1が増加する。さらに膠芽腫細胞のAQP1発現亢進が、Cathepsin BやFocal adhesion kinase (FAK)・Paxillinの発現上昇、Matrix metalloproteinase (MMP) 9の活性化を介した浸潤能・遊走能を亢進、血管新生抑制因子であるThrombospondin type-1 domain containing 7A (THSD7A)の発現抑制を介して、血管新生を促進するだけでなく、新生血管の形態学的変化にも影響を及ぼしている。 本研究は、膠芽腫におけるAQP1の発現意義の解明および細胞運動能や血管新生、血管の形態へ影響を及ぼす細胞内シグナル経路をさらに解明し、AQP1の発現制御による腫瘍の浸潤能・遊走能の低下、THSD7Aを介した血管新生を抑制することで腫瘍進展を抑制するといった新たな治療戦略を目指し挑戦するものである。具体的にはin vitroの実験系としては本研究で作成したAQP1発現調整細胞株にAQP1阻害剤を投与し、上記を証明する。またin vivoにおいてはAQP1発現調整細胞株を免疫不全マウスの脳に移植し腫瘍体積、腫瘍内および周囲の血管新生の程度を比較し、腫瘍細胞のAQP1発現量の変化による腫瘍形成の差を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画ではAQP1発現調整細胞株に対してAQP1阻害剤投与による浸潤能・遊走能の変化および血管新生抑制効果を証明する計画であった。申請者の所属研究室が大きく変わったため、実験系の立ち上げに時間を要している。引き続き当研究オリジナル細胞株であるAQP1発現調整細胞株の安定培養を確立し、当初予定した実験系の再開を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の所属研究室が大きく変わったため、実験系の立ち上げに時間を要している。引き続き当研究オリジナル細胞株であるAQP1発現調整細胞株の安定培養を確立し、当初予定した実験系の再開を行う。 1. 細胞の安定培養が困難な場合は、膠芽腫細胞株を変更し、再度AQP1の発現レベルを確認する。AQP1の発現を認めない場合はAQP1発現調整株を作成する、 2. AQP1阻害剤投与によるAQP1発現調整株の浸潤能・遊走能の変化および血管新生抑制効果を証明する。AQP1阻害薬はこれまで塩化水銀のみが知られており、治療を考える上で現実的ではなかったが、研究用として購入可能となったAQP1阻害剤(CVPA 10-1430, Focus Biomolecules)を購入し、AQP1阻害薬投与によるAQP1発現調整細胞株の解糖系活性の変化、腫瘍の遊走能、浸潤能、血管新生能に及ぼす影響を確認する。 3. 免疫不全マウス(BALB/cSlc-nu/nu)の脳にAQP1発現調節腫瘍細胞株およびコントロール群を移植し、腫瘍体積、腫瘍内および周囲の血管新生の程度を比較し、腫瘍細胞のAQP1発現量の変化による腫瘍形成の差をin vivoにおいても確認する。
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Causes of Carryover |
実験の遅れにより、物品の必要が少なかった。翌年に研究を推進する予定である。
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