2023 Fiscal Year Research-status Report
悪性神経膠腫・悪性髄膜種において新規分子標的となる転写キメラの同定とその機能解析
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21K09165
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
野々口 直助 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70388263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 信司 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (20340549)
池田 直廉 大阪医科薬科大学, 医学部, 非常勤講師 (50434775)
古瀬 元雅 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (70340560)
宮武 伸一 大阪医科薬科大学, 医学部, 特別職務担当教員(教授) (90209916)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 転写キメラ / 融合遺伝子 / キメラRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトのmRNA(転写産物)の種類はゲノム上の遺伝子の数よりも遥かに多く、その中には異なる2つ以上の遺伝子に由来する融合転写産物 (以下、キメラRNA)も含まれている。キメラRNAの中には腫瘍の染色体異常によって形成された融合遺伝子(fusion gene)にコードされる病的な転写産物だけでなく、「トランス・スプライシング」や「ポリメラーゼ・リードスルー」といった特殊な転写過程を経て生成される「転写キメラ」が存在し、遺伝子再編成を伴わない後者は正常細胞においても発現しうるキメラRNAである。近年、これらの「転写キメラ」が正常の幹細胞の分化制御やがん化にも関与している可能性が報告されているが(Elfman J,et al. Stem Cell International. 2018)、本研究課題では「悪性グリオーマ」および「悪性髄膜種」を対象にこれらの悪性脳腫瘍において特異的に高発現している「転写キメラ」(=遺伝子再編成を伴わないキメラ転写産物)を探索し、上記腫瘍の診断や治療標的として利活用することが目的である。我々は染色体上の位置が互いに離れている二つ以上の遺伝子に由来する転写産物がスプライシングの過程で繋がるトランス・スプライシングによって生成される転写キメラのうち膠芽腫特異的に発現が上昇しているキメラRNAを複数種類同定しており、これらの発現レベルの上昇が腫瘍の悪性形質に及ぼす影響について検証実験を実施中である。また昨年度はグリオーマの幹細胞株(glioma stem cell:GSC)にin vitroでX線の反復照射を実施してX線感受性を有意に低下させたGSC株(radio-resistant GSC:GSC-RR)を複数株作成し、X線治療に対する耐性を獲得する過程で発現レベルに有意な変動が認められるキメラRNAに着目して研究を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膠芽腫の臨床検体を対象に実施したRNAシーケンスのデータを“ChimPipe”( BMC Genomics. 2017)を用いて複数の腫瘍検体で共通して発現が認められる転写キメラの探索を実施し、膠芽腫特異的に高発現が認められる一方、低悪性度グリオーマ(LGG)や正常脳組織(NB)においては発現が有意に低かった転写キメラを抽出した。次にヒトグリオーマ細胞株およびヒト悪性髄膜腫細胞株から抽出したRNAを用いて上記キメラRNAを発現している細胞株を選択して、これらの細胞株が抗がん剤を曝露させた際、あるいはX戦を照射した後にキメラRNAの発現レベルがどう変化するかについての定量実験を行い、validation studyを実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
PTN遺伝子のExon 1とHSPE1遺伝子のExon 1がトランス・スプライシングによって融合することで形成されると考えられる転写キメラ(PTN/HSPE1 chimeric RNA)を強制発現するグリオーマ幹細胞株を作成し、細胞の増殖能・浸潤能・血管新生能・幹細胞能に与える影響についての検証実験を行っており、悪性神経膠腫・悪性髄膜腫の診断に活用できる分子マーカーとしての転写キメラの同定を目指す。
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