2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性脳低灌流を加えた新規認知症モデルの開発と内皮機能障害メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K09169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中瀬 泰然 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (60390928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板東 良雄 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20344575)
清水 宏明 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20506638)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 病態モデル / アルツハイマー病 / 慢性脳低灌流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は新型コロナウイルス蔓延防止対策に伴い移動制限や診療業務の増加に伴い当該研究へのエフォートが不十分な状況であった。共同研究者との動物実験実施ができなかったため、web会議やメールなどにより情報交換を行った。当該動物実験についての動物実験倫理申請を行い、より安全でラットへの負担が少ない手術方法、実験方法を確認し、当該動物実験の承認を得た。 また本研究のテーマである血管内皮機能障害と神経細胞障害との関連について実臨床における状況を確認するべくデータ収集を行った。方法として、アルツハイマー型認知症患者を対象に、過去に2回以上の認知機能検査と頭部MRI検査、血液検査をおこなった症例を後ろ向きに検索した。大脳における慢性炎症、細小動脈障害の惹起因子としてホモシステインに注目した。その結果、1)便秘患者で便秘なし患者に比して血清ホモシステイン値が有意に高いこと、2)便秘患者では同じく便秘なしの患者に比較して大脳白質病変の拡大が有意に速いこと、3)便秘患者では便秘のない患者に対して認知機能悪化速度が有意に速いことを見出した。これらの結果から、便秘により生じたホモシステイン高値と白質病変の拡大および認知機能悪化が併存していることが明らかになった。炎症性血管内皮障害と白質病変との関連を示唆する所見と言え、そのメカニズムを解明するための当該動物実験の重要性を再確認できたといえる。このアルツハイマー型認知症患者を対象とした後ろ向き観察研究の結果については日本認知症学会学術集会で発表するとともに、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに動物実験の倫理委員会承認を得ているため、現在はラットの購入と手術器具の準備を行っているところである。実験動物が納入され次第、実験を開始できる状況となっている。大脳切片の免疫組織染色結果を評価するためのコンピューター画像処理ソフトは所属研究室が新たに開発した自動関心領域計測アルゴリズムを利用できるように準備した。 また、2021年度に作成し投稿した“便秘を伴うアルツハイマー型認知症患者におけるホモシステインの認知機能悪化に及ぼす影響を明らかにした論文”は改訂作業を行っているところであり、順調に論文化作業を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は新型コロナウイルス蔓延の影響により診療業務が増加したため、実際の手術実験についての打ち合わせに時間を要してしまったことや、倫理委員会への申請が遅れたことにより2021年度から開始する予定であったラットへの手術実施ができなかった。今年度もまだ新型コロナウイルス蔓延による移動制限の影響が残っているため、当該動物実験へのエフォートが十分でない状況が続いている。そのため、より迅速な実験推進を行う方策として、遠方の共同研究者との協働実験よりも、まず所属研究室内からアドバイスをもらいながらラットの手術実施を開始することとする。さらにライブ動画配信などの環境を整えて、インターネットを利用した迅速な情報共有や情報交換を行えるようにして、実験実施速度を上げる予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度に実験動物を用いた実験ができなかったため、実験動物購入費用が発生しなかった。また動物手術、実験に伴う消耗品、試薬の購入もなかった。そのために次年度への繰越助成金が発生してしまった。 2022年度は繰越助成金を用いて実験動物の個体数を計画よりも増やして、実験データ精度の向上を目指す予定である。
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