2022 Fiscal Year Research-status Report
慢性脳低灌流を加えた新規認知症モデルの開発と内皮機能障害メカニズムの解明
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21K09169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中瀬 泰然 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (60390928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板東 良雄 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20344575)
清水 宏明 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20506638)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 病態モデル / アルツハイマー病 / 慢性脳低灌流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は2021年度に引き続き新型コロナウイルスパンデミックに伴う診療業務の増加により当該研究へのエフォートが不十分な状況であった。一連の動物実験を行うための十分な時間が確保できなかったため実験動物を用いた研究は行えなかった。 一方で、本研究のテーマである血管内皮機能障害と神経細胞障害との関連を明らかにするための臨床研究を行った。2021年度に実施した研究で便秘により生じたホモシステイン高値と白質病変の拡大および認知機能悪化が併存していることを明らかにして炎症性血管内皮障害と白質病変との関連が示唆され、その研究成果は英文誌に採択掲載された(Impact of constipation on progression of Alzheimer's disease: A retrospective study. CNS Neuroscience & Therapeutics 2022; 28(12):1964-1973)。さらに、アルツハイマー型認知症および軽度認知障害患者を対象に心房細動の有無で病態背景に差異があるか検討した。その結果、心房細動は局所脳血流量低下には影響せず側脳室前角周囲白質病変を悪化させることで認知機能低下に影響していることが明らかになった。この研究成果も英文誌に採択掲載されている(Impact of atrial fibrillation on the cognitive decline in Alzheimer's disease. Alzheimers Res Ther. 2023;15(1):15. doi: 10.1186/s13195-023-01165-1)。いずれの成果も、白質病変から示唆される慢性炎症が認知機能低下に影響していることの査証と言え、動物実験の背景をサポートするデータである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症への臨床対応などで動物実験のためのまとまった時間が取れず、基礎実験は進められていない。一方、これまで蓄積のあるデータを用いて基礎研究の背景となる臨床データの解析を行ない、学会発表や論文作成までは達成できている。 便秘を伴うアルツハイマー型認知症患者では腸内細菌叢由来と推測されるホモシステインの増加により、大脳白質病変の進展速度が速くなるとともに認知機能悪化の速度も速くなることを明らかにした研究、さらにアルツハイマー型認知症リスク要因の一つとして指摘されている心房細動について、その病態として慢性脳灌流量低下とは独立した大脳白質病変の関与であることを明らかにした研究とも論文化を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度において実験設備の確認、調整は終了しているため、動物実験をすぐにでも行える環境は整っている。実験時間の確保が課題だが、診療時間とのエフォート調整を行い、できる限り速やかにラットの手術を開始したい。共同研究者とのミーティングは引き続きオンラインで行い、時間的ロスを最小限にする。研究室内あるいは学内他部署からの人的サポートも活用していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染対策の影響で研究活動が制約されたため、2021年度の使用額が想定以上に少なく、2022年度への繰越が生じてしまった。2022年度は比較的順調に予算執行できたため、2023年度への繰越額は大きくない。 2023年度はより厳密な計画のもとに予算執行を行なっていく予定。
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