2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of non-invasive monitoring intracranial pressure device based on intracranial resonance characteristics
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21K09173
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
降旗 建治 信州大学, 医学部, 客員教授 (90021013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 一博 信州大学, 医学部附属病院, 特任教授 (00135154)
後藤 哲哉 信州大学, 医学部, 特任准教授 (30362130)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 頭蓋内圧 / 差圧センサ / 頸動脈脈波 / 外耳道内脈波 / 音響管 / 非侵襲的モニタリング / 周波数伝達関数 / 頭蓋内共振周波数 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、頸動脈圧(CCP)脈波や外耳道内圧(EACP)脈波の解析による非侵襲的頭蓋内圧(ICP)類推の研究を進めて来た。しかし、これまで血圧に対応する圧センサを使用したために、CCP脈波計測では内頸静脈の圧迫問題、およびEACP脈波計測では外耳道内密閉と鼓膜圧迫問題に課題が残されている。本研究の意義は、血流に対応する差圧(DP)センサ(2点間の圧力差)を使用すれば、上記圧迫問題の課題が解決できることである。開発したCCDPセンサやEACDPセンサは、原理的にDPセンサの一つの終端ポートが開放されているために、圧迫感が全く無い。この成果は、非侵襲的ICPモニタが両センサ出力個別にICP類推が可能であり、さらに両者間の伝達関数特性からもICP類推が可能であるため、緊急医療現場や長時間モニタリングにも有効な計測ができるという重要な展開をもたらす。 令和5年度には、DPセンサを用いた非侵襲的ICPモニタの第1号試作器を完成させた。具体的には、最初に外力なし総頸動脈差圧(CCDP)センサ用貼付吸盤アタッチメント(外径42mmΦ)を工夫してチューブ(内径4mmΦ)による一次元波動を誘導し、その終端に市販のDPセンサ(Sensirion: SEK-SDP810)を組込んだものを開発した。次に外耳道内差圧(EACDP)センサは、耳栓(リオン製耳栓セットRSM1S100)と音響管としてのチューブ(内径4mmΦ)による一次元波動を誘導し、その終端に同じDPセンサを組み込み、閉塞感が全く無いものを開発した。両センサは、血圧測定のカフ方式と同様に上腕部に面ファスナーを巻いて装着できるように工夫したので、その面ファスナーに結束バンドを利用して固定した。最終的に、両者のDPセンサ出力を直接USB経由でPC(ASUS X515JA-BQ2695 WS)にデータを収集できるモニタ装置を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近差圧センサは、0.1 Pa以下の高感度のものが開発され、医療用脈波波形測定に応用され始めている。本研究の目的は、同一原理による頸動脈差圧センサと外耳道内差圧センサを開発し、同じディメンションの両出力間伝達関数(頭蓋内共振特性)から得られる共振周波数(NRF)を求める。頭蓋内圧(ICP)が上昇すると脳コンプライアンスは著しく低下し、そのNRF(Hz)も上昇し、この上昇率は、ICPに対して指数関数的関係にあることをすでに明らかにした。このことから、類推頭蓋内圧値(PICP)は、次式から計算できる原理である。具体的に、PICP=0.0356*NRF*NRF (cmH2O) で求められる。 現在までの進捗状況は、「(3) やや遅れている。」である。その理由は、① 提案した非侵襲的ICPモニタの「血圧に対応する圧センサ」を使用して圧脈波を計測していたが、現在「血流に対応する差圧センサ」を新たに選定して設計を大幅に変更し、第1号試作器を完成するのに時間を要したこと、および ② 新型コロナウイルスの影響が非常に大きくワクチン接種が進んでも、新型コロナウイルスが収束に向かうことはなかった。そのため被験者の同意書を得るのが困難な状況が改善することはなく、臨床試験の実施に遅延が生じた。 今の課題に対しては、インフォームド・コンセントを得たうえで侵襲的ICPモニタを設置した患者を対象に臨床試験を行う必要がある。新型コロナウイルス感染症5類移行後、徐々に通常の医療提供体制への移行が進められ、臨床試験も以前のように実施できることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
更新したMATLABは、数値解析ソフトウェアとプログラミング言語の統合開発環境であり、科学技術計算やデータ処理を行うために使用できる。C言語の力強さと高速性により、MATLABは大規模な計算やリアルタイム処理など、高度な処理を要求するタスクにも対応できる特徴がある。現在開発中の非侵襲ICPモニタ用プログラムは、全ての処理を自動化するために、自動雑音除去処理や頭蓋内への入力(CCDPセンサ)と出力(EACDPセンサ)から直接伝達関数を求めるばかりでなく、低次の多項式の比を使用して入力と出力間の有効な伝達関数モデルが構築でき、「有効な共振周波数とQ値(Quality Factor)」を得るところまでプログラムを完成させている。今後、MATLABを起動したときに計測時に毎回実行したいコマンドは、startup.m というファイル名のスタートアップファイルを作成することで、起動時に自動的に実行できるように工夫する。更に、アプリケーション コンパイラ アプリにより、MATLABプログラムを MATLAB 外部で実行できるアプリケーションにパッケージ化し、より専用ソフトを充実させる。これらのプログラムを利用して、臨床試験結果の解析を試みる。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)新型コロナウイルスの影響が非常に大きく、5類移行後も被験者の同意書を得るのが困難な状況が続き、当初予定していた臨床試験の実施に遅延が生じたため、次年度使用額が生じた。新型コロナウイルス感染症5類移行後、徐々に通常の医療提供体制への移行が進められ、臨床試験も以前のように実施できることが期待できるため、次年度以降は、臨床試験の実施及び得られた研究成果の学会発表、英文校正、論文投稿等に使用する計画である。 (使用計画)次年度使用額は、インフォームド・コンセントを得たうえで侵襲的ICPモニタを設置した患者を対象にした条件での臨床試験データが取得できたと同時に得られた成果の学会発表、英文校正、および論文投稿等に使用する計画である。
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