2021 Fiscal Year Research-status Report
Innovative treatment of soft tissue tumors by air plasma-activated medium
Project/Area Number |
21K09217
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Research Institution | Plasma ChemiBio Laboratory |
Principal Investigator |
鈴木 良弘 一般社団法人プラズマ化学生物学研究所, 研究部, 代表理事 (80206549)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 低温大気圧プラズマ / アポトーシス抵抗性 / mitochondria / ミトコンドリアダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
APAMの骨肉腫細胞株HOS, 143B, MG63, LM8に対するin vitro抗腫瘍効果をWST-8、Annexin V/7-AAD二重染色とFACS解析ならびに顕微鏡観察により調べた。APAMに対する感受性は細胞株によって異なり、感受性細胞ではAPAM 濃度6.3%以上で、抵抗性細胞では12.5%以上で顕著な増殖抑制と細胞死を濃度依存的に誘導した。細胞株により、アポトーシスまたは非アポトーシスが起こり、高濃度では、主に非アポトーシスが増加した。APAMは正常細胞の増殖はほとんど減少させず、肺繊維芽細胞(WI-38)に対しては50%まで、皮膚線維芽細胞、骨芽細胞に対しては25%まで、それぞれ生存率に影響しなかった。 APAMはマウスLM8自家腫瘍ならびにヒト143B他家腫瘍移植モデルにおいて腫瘍の増殖を顕著に抑制した(腫瘍体積が1/5-1/8まで減少)。その一方で、体重減少、衰弱、下痢、毛の異常、食欲不振、異常行動などの全身異常は見られなかった。以上から、APAMが高い腫瘍選択性を持ち、骨肉腫に対して強い抗腫瘍効果を持つことが確認された。 APAMによる細胞死は、アポトーシス、オートファジー、ネクロトーシスならびにフェロトーシス阻害剤のいずれでも顕著に抑制されなかったが、鉄キレーターBipyridylおよびDeferoxamineにより強く抑制された。APAMは低濃度ではミトコンドリアの分裂ならびに核の縮小を、高濃度ではミトコンドリアの凝集ならびに核の激しい断片化をそれぞれ引き起こした。さらに、Bipyridylはこれらの形態変化を強く抑制したことから、フェロトーシスとは異なる鉄依存性細胞死の関与が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている。 科学研究費の納入が大幅に遅れたために、高額の物品の発注が遅れたこと、海外からの物品の調達が滞ったため、計画していた実験ができなかったことによる。当初予定したフェロトーシス関連実験のうちGPX4活性の測定、GPX4の遺伝子ノックダウンによる解析はノックダウン試薬未調達のために行えなかった。しかし、フェロトーシスの発見当初は、GPX4活性阻害による過酸化脂質の蓄積が主要な経路と考えられていたが、最近では、GPX4に依らない経路でもフェロトーシスが誘発されることが示され、さらに、APAMによる細胞死は生化学的、形態的にフェロトーシスとは異なることが示唆されたので、GPX4に関する検討は不必要と考えられる。本年度、APAMによる細胞死は、カノニカル細胞死(アポトーシス、オートファジー、ネクロトーシス)とは異なること、鉄依存性ではあるが、フェロトーシスとも異なることが数種類の細胞株で確認できた。さらに、APAMによるミトコンドリアおよび核の形態異常が、鉄の除去によって軽減され、鉄ストレスによることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在認められているモデルでは、フェロトーシスは、過酸化脂質の蓄積によって起こり、その蓄積には、化学的に活性な鉄(II)とNOX由来のH2O2のフェントン反応によって生じるヒドロキシラジカル生成が重要であり、鉄(II)は、鉄貯蔵タンパク質のフェリチンのオートファジー分解によって供給されると考えられている。また、この細胞死にはミトコンドリアが関与せず、核の形態もほとんど変化しないことになっている。これに対して、APAMによる細胞死では、ミトコンドリア、小胞体ならびにゴルジ体に存在する鉄(II)の動態に変化がある可能性および鉄動態異常が核の崩壊に関与することが示唆された。そこで、細胞内鉄量をフェロジン法で直接測定してその変動を検討する。これらのオルガネラ内の鉄がオートファジー分解によって放出され、その形態変化、変性に繋がるかどうかを検討する。
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