2021 Fiscal Year Research-status Report
早期変形性膝関節症からの変性進行が予測されるハイリスク群に生じる力学的因子の特定
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21K09236
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
星川 淳人 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (50383021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 春彦 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60755677)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 歩行解析 / 膝 / 動的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症(OA) は関節軟骨の変性を主態とするが軟骨組織は自己修復能が極めて乏しいため、発症早期の段階で変性進行のリスクファクターをとらえ是正することが重要となる。静的評価である画像診断では明らかな異常を認めない状態であっても、関節運動や関節構成体の挙動を定量評価することで、膝OAのリスクファクターとなりうる異常な動きを検出することができるかもしれないとの考えに基づき、早期OAを対象としてOA進行のリスク要因の探索を進めた。 本研究課題では立脚初期に膝関節が急激に外側へ横ぶれするLateral thrust (側方動揺)に着目している。OAが進行し膝の内反変形が生じればLateral thrustも明らかとなるが、変形をほとんど認めない早期OAを対象として加速度計によりLateral thrustを評価することを目的のひとつとしている。 2021年度は数名の被検者のデータを取得しつつ加速度計設置位置の最適化の検討を行った。また、加速度計でLateral thrustを評価することの妥当性を検証するために、三次元動作解析装置と同期させてデータを取得した。さらに、Lateral thrustによる異常な応力集中が原因と推測しているMRI画像上の骨髄浮腫像に着目し、同部の局所的な骨密度をQCT法で評価するために骨髄浮腫像を認めた被検者のCTを撮影した。 OA進行の構造的なリスク要因として半月板変性に伴う機能不全があげられる。なかでも内側半月板後根損傷は、急激に半月板の荷重分散機能が失われるためOAが急速に進行したり骨壊死を生じたりすることが注目され、半月板の機能回復のため積極的に手術が行われている。診断はMRIによりなされることが標準であるが、半月板の挙動をエコーにより動的に評価することで内側半月板後根損傷の早期診断につながる特徴的な所見を見出し研究成果として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
OAをすでに発症している膝においてLateral thrustはOA進行のリスク要因となることが知られており、早期OAを対象とする本研究課題でも膝に生じる可能性のある異常な動きとしてLateral thrustに着目しているが、スポーツによる下肢疲労性障害においてKnee-in, Toe-outと呼ばれる捻じれ動作が障害発生因子となることが知られており、OAにおいてもリスク因子となっているかもしれず、本研究課題のターゲットのひとつとしている。加速度計を用いてLateral thrustを評価する既報はいくつかあるが、Knee-inを評価したものは存在しない。研究初年度であった2021年度は、Lateral thrustだけでなくKnee-inを評価するために至適な加速度計設置位置についての検討を中心としたため、測定結果を解析し研究課題の問いに対する成果を得るまでには至っていない。 本研究課題の直接的なプロジェクトではないが、急速なOA進行の原因として近年着目されている内側半月板後根損傷における半月板の異常な挙動を、エコーを用いて動的に評価することで明らかとした。内側半月板後根損傷は両膝罹患例も多く、半月板損傷につながる膝の異常な動きが潜在している可能性があるため、本研究課題の着眼点であるLateral thrustやKnee-inの評価とリンクして検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は歩行解析症例の集積を図るとともにデータ解析を進めていく予定である。データ解析を促進するために測定された加速度波形からLateral thrustに相当するピーク値を自動検出するアルゴリズムの作成を予定している。これにより被検者にすみやかに結果をフィードバックすることも可能となり、本研究課題の目的の一つとしている被検者に異常な膝の動きを認めた場合に運動療法を行うことにより改善することができうるかというサブプロジェクトにも取り掛かることができると考えている。
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Causes of Carryover |
データ解析を促進するために測定された加速度波形から目的とする値を自動検出するアルゴリズムの作成を予定していたが、本研究課題の第一の関心領域であるlateral thrustに加えて、さらにいくつかの膝の異常運動を検出するための方策を検討したところ、費用が高額となり初年度の予算額の範囲に収まらないことが判明した。そのため次年度にデータを集積しつつ測定値の妥当性などを検討してlateral thrustに加える測定項目を決定することとしている。
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Research Products
(14 results)