2021 Fiscal Year Research-status Report
Examining the mechanisms through which GLP-1 receptor agonists ameliorate the secondary injury process of spinal cord injury
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21K09238
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 裕幸 東海大学, 医学部, 准教授 (40348678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 雅彦 東海大学, 医学部, 教授 (40220925)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 二次障害 / 小胞体ストレス / RNAシーケンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷後二次障害で発生するアポトーシスにおける小胞体ストレスの関与をこれまで確認してきた.糖尿病治療薬グルカゴン用ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬に小胞体ストレス応答能増強作用があるため,脊髄損傷の治療薬としてGLP-1受容体作動薬であるエキセナチドの効果とその作用機序を検証する研究を行っている. 10週齢雌SDラットでIH impactorを用いて第10胸椎高位に脊髄圧挫損傷を作成し,治療群では損傷直後と受傷後7日にエキセナチドを,対照群ではPBSを皮下投与して,椎弓切除のみの群との3群比較を行っている.エキセナチドの投与により損傷脊髄内でのpro-apoptotic transcription factorであるCHOPは抑制され,細胞保護的に働く小胞体シャペロンであるGRP78は増加を認めたことから,GLP-1受容体作動薬エキナセチドは小胞体ストレス応答を増強しアポトーシスを抑制することで下肢運動機能を改善することを報告した.また,エキセナチド投与がマクロファージの極性転換を誘導することも確認している.エキセナチド投与により抗炎症/組織修復に関与するM2の指標となるArginase1,CD163,CD206が有意に増加し,一方炎症/組織傷害に関連するM1の指標となるiNOSとCD16は損傷後に有意に低下していた.更に,RT-PCRによりTNFα ,IL-1β等の炎症性サイトカインが減少し,IL-4,IL-10の抗炎症性サイトカインが上昇することを確認した. 現在進行中の解析としては,エキセナチドが脊髄損傷後の血液脳脊髄関門の破綻を軽減するとの仮説の下,損傷後の血管透過性の検討と,tight junctionタンパクを解析している.また,エキセナチド投与による効果を網羅的に解析するためにRNAシーケンシングを行うことを計画し,試料を準備している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液脳脊髄関門に対する検討を行うために,損傷後24時間・48時間にEvans Blueを頚静脈内に投与してから脊髄を摘出した.脊髄内に析出した色素量を分光光度法で測定したところ,損傷後48時間でエバンスブルー漏出がエキナセチド投与群で有意に低く,エキセナチドによる血液脳脊髄関門の保護効果を確認した.その機序を検討するためにTight Junctionに関わるタンパクをwestern blotで定量したところ,損傷後48時間でエキセナチド群において,Zo-1, claudin-5の発現が有意に高値を示した.病理学的検討では,損傷後14日のHE染色でエキナセチド群で有意に空洞面積が減少し,LFB染色でも髄鞘が有意に保護されていることが観察できた.エキセナチド投与群におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の数は対照群より有意に高く,オリゴデンドロサイトへの分化や再髄鞘化を確認する実験を進めている.損傷後24時間と48時間にBrdUを腹腔内投与し,損傷後7日,14日,28日の脊髄を摘出し,増殖してBrdUに標識されたオリゴデンドロサイト前駆細胞から分化したオリゴデンドロサイト数の定量,そしてそれらによる再髄鞘化を観察するための試料作成中である.また並行して,RT-PCRによる小胞体ストレスに関わるsignal pathwayの検討,そして損傷後24時間の脊髄をエキセナチド投与群・対照群から摘出し,RNAシーケンシングによる網羅的な解析に向け,試料を準備している.
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Strategy for Future Research Activity |
RNAシーケンシング結果により,脊髄損傷後のエキセナチド投与がどのように遺伝的な変化をもたらすのかを明らかにして,特に小胞体ストレスやオートファジー等,細胞恒常性機構に対する作用を解析する計画である.その作用効果を確認するために,エキセナチドの効果発現に関わるsignal pathwayをwestern blotやRT-PCRで追跡する. エキセナチドの作用機序をある程度明らかにできたら,GLP-1受容体阻害剤投与を用いたloss-of-function実験などでさらにエキセナチドの効果を検証する.
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Causes of Carryover |
小額の研究費の残額があり,次年度に継続する研究に充てる. 特に次年度は,エキセナチドの作用機序を確認するためのRNAシーケンシングを計画しているが,本学の研究支援センターでは全行程を賄うことができないことが判明した.そのため,RNAシーケンシング作業は外注で施行せざるを得ず,一定の研究資金が必要となる.その結果が得られてから,関連するsignal pathwayを解析する必要があり,それに向けて現在タンパク(western blot),及びRNA(RT-PCR)の解析を行うための試料を作成しており,抗体や試薬の購入に充てる予定である.
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Research Products
(2 results)