2021 Fiscal Year Research-status Report
Pathophysiological investigation for skeletal deformities of musculocontractural Ehlers-Danlos syndrome using iPS and genome-editing tool
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21K09246
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岳 鳳鳴 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20532865)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | iPS疾患モデル / CHST14遺伝子変異 / 脊椎変形 / エーラス・ダンロス症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
エーラス・ダンロス症候群(EDS)は皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする先天性疾患の総称であり。本学は、D4ST1をコードするCHST14遺伝子の変異によって起きるmcEDSを見出した。EDSの様々な型において認められ、骨の変形が進行し、高度になると、体幹バランスの悪化、呼吸機能障害、摂食障害などを生じ、患者のQOL / ADLを低下させる最も重要な症状の一つである。しかし、患者から組織サンプルを取得するのは困難であり、たとえ組織サンプルが得られても個々の細胞タイプの正確な分析が難しく、骨芽細胞から骨細胞への移行などの一過性のイベントを観察するのはほぼ不可能である。また、骨格変形が遅発性ための動物モデルでの研究は限られている。それらのことから、発症メカニズムは明らかになっていない。本研究の目的は、患者由来のiPS細胞用いて、骨形成のプロセス全体をモデル化することで、骨格変形の発症を解明することである。そして、疾患の原因となるCHST14遺伝子の変異、あるいは、それによる影響を取り除くことを試み、新規治療法の探索に役立つ可能性がある知見を導き出す。 今年度は、既に樹立したmcEDS-CHST14患者の皮膚繊維芽細胞由来iPS細胞(A108, A279, A280)と、対照としてCHST14変異のない正常iPS細胞(253G)を用い、骨形成分化の過程を模倣した段階的分化法で骨様結節の形成を試みた。骨形成細胞の分化過程において、骨組織前駆細胞、骨芽細胞、骨細胞などの指標となる遺伝子発現を解析し、カルシウム沈着量を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者のiPS細胞から分化誘導した骨細胞の遺伝子発現変化することが明らかになり、骨組織のカルシウム沈着は正常iPS細胞より少ないことが示された。 一方で骨形成分化の過程の遺伝子発現量は、骨組織前駆細胞のマーカーであるRUNX2は、正常iPS細胞253Gでは、Day1にて最も発現量が多い、患者のiPS細胞ではDay2が最も多かったことから、患者iPS細胞から骨組織への分化誘導は正常細胞からの分化誘導と比べて遅延する可能性を示した。前骨芽細胞のマーカーであるALPLとCOL1A1は、正常iPS細胞253Gでは、患者のA108、A279の発現量が253Gより高かったことが分かった。骨芽細胞のマーカーであるOCNは、正常iPS細胞253Gより高かったことが示されたが、RNAへの転写をアップレギュレートして補っていると考えられる。PHEXは骨細胞のマーカーであり、骨の鉱化作用に関与している。患者iPS細胞発現量が正常iPS細胞253Gより低かった。A280の発現量に著明な増加は見られなかった。以上の結果から、患者iPS細胞から骨細胞への分化と鉱化能が正常iPS細胞より低下する可能性を示した。 アリザリン染色で骨組織のカルシウム沈着を調べることで、患者iPS細胞のA108とA279において、正常iPS細胞である253Gに比べて、肉眼的にカルシウム沈着量が少ない、A280では特に乏しいことが分かった。カルシウム沈着量を定量化した結果も、患者のA108とA279は253Gより少量である。A280ではほとんど増加がみられなかった。 以上より、mcEDS患者iPS細胞から骨組織への分化と石灰化の異常は、mcEDS患者骨格変形の一つの原因と考えられる。患者特異iPS細胞を用いて骨形成過程の可視化と骨疾患病態再現が有用であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
このプロジェクトには三つの骨格がある。その一つは、患者由来のiPS細胞用いて、骨のような小結節を分化誘導し、骨形成のプロセス全体をモデル化することで、骨格変形の発症を解明することである。二つ目は正常なiPS に疾患の原因となるCHST14遺伝子をknockoutして、CHST14遺伝子の変異がある患者のiPS細胞が由来する骨と同じ特徴があるか解析する。三つ目は、CHST14遺伝子の変異、あるいは、それによる影響を取り除くことを試み、新規治療法の探索に役立つ可能性がある知見を導き出す。令和4年度はIn vivoで骨の形成とゲノム編集の着手である。 1.In vivoで骨形成:in vitroで形成させた骨様結節をSCIDマウスの頭蓋骨に作成した骨欠損部位に移植し、6週間後、移植部の石灰化組織、コラーゲン構造及び密度を測定する。 2.ゲノム編集: mcEDS-CHST14患者におけるCHST14の遺伝子変異(c.842C>T/878A>G)は、患者由来iPS細胞でも確認されている。正常なiPS細胞に、CRISPR-Cas9システムを用いて、CHST14遺伝子変異の導入を行う。これも骨形成細胞の分化過程の各種類の細胞の遺伝子発現とカルシウム沈着量を測定する。
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