2023 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷後疼痛におけるN型電位依存性Ca2+チャネルの役割と新規急性期治療の開発
Project/Area Number |
21K09272
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大橋 正幸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70706720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 洋 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00262436)
大橋 宣子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70706712)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 興奮毒性 / カルシウムイオン / 二次損傷 / 神経障害性疼痛 / パッチクランプ / 電位依存性カルシウムチャネル / 脊髄保護療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷後の疼痛は、運動麻痺と同様に生活の質を著しく低下させる重篤な病態であり、代表的な難治性疼痛の一つである。従来より脊髄レベルでの電位依存性Ca2+チャネル (VGCC)の関与が報告されているが、その詳細な機序は未だ不明である。さらに欧米ではN型VGCC遮断薬であるω-conotoxin MVIIAは難治性疼痛に対してくも膜下投与で臨床使用されているが、脊髄損傷後疼痛に対する有効性は検討されていない。そこで、本研究は脊髄損傷後疼痛におけるMVIIAの鎮痛効果およびその機序を検討し、脊髄レベルでのN型VGCCの関与を明らかにすることを目的とした。脊髄損傷後疼痛モデル (SCI)ラットを用いて、まず行動学実験ではMVIIAのくも膜下投与を行いvon Frey testによる痛み閾値を記録した。次にin vitroパッチクランプ電気生理学実験を行い、脊髄後角の微小興奮性シナプス後電流 (mEPSC)および後根刺激による単シナプス性EPSCを記録し、MVIIAに対する反応を検討した。さらに、in vivoパッチクランプ記録により自然発火および後肢刺激に対する発火頻度を検討した。行動学実験ではMVIIA投与により痛み閾値の改善を認めた (p<0.01)。in vitroパッチクランプ記録では、MVIIA投与により微小興奮性シナプス後電流 (mEPSCs)の振幅は不変であったが、頻度は有意に減少した (p<0.01)。またMVIIAはAδおよびC線維刺激による単シナプス性EPSCを有意に抑制した (p<0.01)。in-vivoパッチクランプ記録では、MVIIA投与により活動電位の発生頻度は有意に減少した (p<0.01)。以上より、MVIIAは脊髄後角の興奮性シナプス前終末に存在するN型VGCCを阻害することで脊髄損傷後疼痛を軽減することが明らかになった。
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