2021 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンDシグナルによる骨格筋の維持制御機構とサルコペニア病態生理の解明
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21K09289
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
細山 徹 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, ジェロサイエンス研究センター, 副部長 (20638803)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビタミンD / サルコペニア / 高齢者 / 遺伝子組換えマウス / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、以前から指摘されている「高齢者で頻発する血中ビタミンD量の低下」に注目し、ビタミンD低下とサルコペニアとの関連性を明らかにすることを目的としている。初年度となる2021年度には、ビタミンD受容体であるVDRを成熟した筋線維のみで欠損した筋線維特異的Vdr欠損マウスの作出とその表現型解析などを行った。 筋線維特異的Vdr欠損(VdrmcKO)マウス作出に必要なCreドライバーにMyf6-CreERT2マウス、VDR遺伝子欠損に必要なfloxedマウスにVdr-floxedマウスを用いた。Vdr-floxedマウスは配偶子の状態で入手したため、まずは本マウス系統の復元を行い、十分な匹数に達したところでMyf6-CreERT2マウスに交配した。得られたMyf6:Vdrマウスにタモキシフェンを腹腔内投与することで、筋線維特異的Vdr欠損マウスを作出した。タモキシフェン投与4週間後に遅筋と速筋でのVdr発現を確認したところ、VdrmcKOマウスにおいて有意な発現減少が認められた。一方、非筋組織におけるVdr発現に変化はなく、また心筋においても発現低下は認められなかった。このことは、成熟筋線維特異的にVdr欠損が生じていることを示している。続いて、VdrmcKOマウスについて、タモキシフェン投与4週間後に体重、筋重量、筋線維径、筋線維タイプのそれぞれの項目についてコントロールマウスと比較したところ、cKOマウスにおける有意差は認められなかった。一方で、グリップストレングステストにより筋力を測定・比較したところ、雌雄ともにcKOマウスで有意な低下が認められた。これらの結果は、VDRおよびビタミンDシグナルが成熟筋線維の筋力発揮において重要な働きをする一方で、筋量などの表現型には関与しないことを示唆している。現在、筋力発揮に関わる因子群の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Vdr-floxedマウスの導入に際し、当初は個体での搬入および使用を計画していたが、所属先動物施設の検疫の関係で配偶子で搬入し施設内で復元するという過程が必要となり、研究開始当初は計画に遅れが生じたが、個体復元後のcKOマウス作製およびその解析がスムーズに進められたことにより、計画進行の遅れは概ね解消された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の2年目には、前年度に作製したVdrmcKOマウスの表現型解析について、筋線維あたりの骨格筋幹細胞数、nuclear domain sizeなどを測定し、筋線維特異的Vdr欠損が幹細胞や筋核数に与える影響について検討する。また、前年度に明らかとなったVdr欠損による筋力低下の原因を探るために、筋力発揮に関わる因子群の発現解析を行う。具体的には、カルシウムイオンの筋内取り込みに関わるSercaやMLNなどの発現がVdr欠損した成熟筋線維で変化するか否かを検証する。さらに、骨格筋のATPase活性を測定するなど、筋力発揮への影響について多角的に検証していく。 当初研究計画には含まれていなかったが、前年度の解析により、ビタミンDシグナルが筋力発揮に直接的に関与する可能性が認められたことから、血中ビタミンD量がサルコペニア発症の予測マーカーとなり得るか否かの検証を開始する。具体的には、国立長寿医療研究センター長期縦断疫学研究データを活用し、地域住民数百名分について血中ビタミンD量と数年後のサルコペニア発症との関係性について検討する。
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Causes of Carryover |
現地開催で予定されていた学会がウェブ上での開催となり、それに伴い旅費執行の計画が変更となった。また、遺伝子組換えマウスの作出において研究初期に若干の遅れが生じ、当初計画していたいくつかのアッセイを次年度に回さざる得ない状況となった。研究の進捗自体の遅れは概ね取り戻せているが、本年度に実行することが出来なかったアッセイについて次年度の早期に実施予定である。
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Research Products
(2 results)