2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒトGastruloid(人工擬似胚)を用いたMSCの発生機序解明
Project/Area Number |
21K09313
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
竹原 俊幸 近畿大学, 大学病院, 助教 (60580561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野寺 勇太 近畿大学, 大学病院, 助教 (30510911)
寺村 岳士 近畿大学, 大学病院, 准教授 (40460901)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / ヒトナイーブ型多能性幹細胞 / Gastruloid / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)を用いた再生医療が次々と進められているが、 その細胞供給には根本的な問題がある。新たなMSCの供給源としてヒト多能性幹細胞からの分化誘導が進められているが、普及には至っていない。その理由として、ヒトMSCの発生機序、詳細な性質と正しい分類、由来組織や時期、培養方法による性質の変化など細胞そのものに対する基本的理解が進んでいないことにある。一方で、ヒトの発生解析は、倫理的にも技術的にも実施困難である。本研究では、ヒトNaive型多能性幹細胞を出発点とした試験管内における初期胚発生モデルGastruloidの構築と、これを用いた間葉系幹細胞の発生機序の解明を行う。Gastruloidは三次元的にヒト初期胚発生を模した培養技術であり、現存する発生モデルとしては最もin vivoに近い。本研究では、発生初期がブラックボックスに覆われるヒト間葉系原基について、ヒトNaive型多能性幹細胞より誘導したGastruloidを用い、発生機序の解明と新しい分化誘導法の確立を試みる。 令和3年度では、本研究の重要なツールであるGastruloid誘導法の確立を試みた。すでにいくつかのGastruloid法は報告されているが、確立されたとはいえない。そこで、Wnt/beta catenin経路の活性化あるいは不活性化による誘導法のどちらが適しているか検討した。すると、マウス多能性幹細胞ではどちらの方法も可能であったが、ヒト多能性幹細胞では、Wnt/beta catenin経路の阻害ではGastruloidの誘導ができなかった。これは、多能性幹細胞の状態が大きく影響していることが示唆される。正常な発生過程を体外で作り出すためには多能性幹細胞の状態を考慮する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、多能性幹細胞からMSCを誘導すると同時にその発生機序の解明を目的としている。しかしながら、現在のところMSCがどのように発生しているかは詳細に明らかとなっていない。その理由はMSCの発生過程を観察することができないことが考えられる。そこで、我々はGastruloidと呼ばれる試験管内で三次元的に初期胚の発生を模した分化を示す誘導方法に着目した。本誘導方法を用いることで体外にて詳細に観察することができ、発生機序の解明が期待できる。 本年度では、マウスおよびヒト多能性幹細胞からGastruloidの誘導法の確立を試みた。Gastruloidは初期胚発生を模した分化を引き起こすためには、Wnt/beta catenin経路を適切に操作する必要がある。しかしながらヒト多能性幹細胞からGastruloidを誘導するためには、従来型の多能性幹細胞 primed型では誘導することができなかった。そこで、より真に未分化性を持つnaive型ヒト多能性幹細胞を用いたところ、マウスと同様に誘導できることが示された。以上のことから、多能性幹細胞の状態を考慮することでGastruloid誘導が可能であった。研究は予定通り実施しているため、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に得られた知見を基盤に、MSCの誘導および可視化を実施する。マウス多能性幹細胞を用いて、Gastruloidを誘導し、各誘導日数における細胞変化とMSCの出現を捉えることを試みる。具体的には、MSCのマーカー遺伝子、たとえばPDGFRaなどを指標に、Gastruloid中に出現しているか、どのような局在を示すかを免疫染色やRealtimePCR、FACSなどによって明らかとする。またGastruloidの誘導法にはいくつか存在するが、どれが最もMSCの発生に適しているか誘導条件の検討を実施し、マウスで得られた知見をヒトに適用する予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度では、これまでに得られたGastruloid誘導法の知見を利用し、まずはマウス多能性幹細胞を用いて、MSCの出現およびその獲得を目指す。得られたMSCについては、従来法との比較を実施し、分化能や増殖能といった性質について本誘導法の優位性があるか評価することを予定している。本年度では、昨年度に引き続きGastruloidへの誘導を実施する。材料は主にマウスES細胞を用いるが、実験の進捗状況に併せてヒトiPS細胞を用いた誘導も実施する。解析にはRealtimePCRによる遺伝子発現解析、免疫染色によるMSCの局在やFACSによる MSCへの分化効率を評価することを予定しており、これらの実験に関連した試薬の購入を検討している。また、 MSCの発生を可視化することを考え、抗体およびplasmidの作成・購入を予定している。
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