2021 Fiscal Year Research-status Report
滑膜線維芽細胞において炎症性サイトカインで誘導されるCDK6の作用点の解明
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21K09335
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
小松 梨恵 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 研究技術員 (80517475)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 滑膜線維芽細胞 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はリウマチ動物モデルであるコラーゲン誘導関節炎マウスにおける阻害剤の投与条件を確定した。これまでの研究からSPACIA1/CDK6の分子機序は関節炎モデルマウスの重度の病態に関与すると考えられ、重度のコラーゲン誘導関節炎を惹起した場合でも統計的に有意に関節炎の病態を改善する条件を明らかにすることを目的とした。具体的には、マウスの病態の重症度(関節腫脹スコアおよび膝関節組織学的評価)、阻害剤の投与条件(効果量および投与時期)、血液生化学検査を指標に詳細に検討した。次年度以降で新たな阻害剤または生物学的製剤を投与する予定であり、同様の項目を指標にした予備検討を行う。 SPACIA1/CDK6が介する炎症性サイトカイン誘導性滑膜線維芽細胞増殖における分子レベルの解析は、まずSPACIA1/CDK6が作用することを確認している細胞周期(G1期)関連因子への影響(mRNAおよびタンパク質)を足掛かりに細胞増殖度(生細胞数および細胞傷害性)を評価した。また、実施済みのマイクロアレイ発現データの解析を進め、炎症性サイトカイン誘導性滑膜線維芽細胞増殖に関わるSPACIA1/CDK6依存的な遺伝子およびシグナル経路の候補を絞った。これら複数の候補についてリアルタイムPCRでマイクロアレイ結果の検証を進めた。その中で有意な発現変動を示した遺伝子は私たちがこれまでに明らかにした細胞周期(G1期)以外の細胞増殖作用に関わることが想定され、SPACIA1/CDK6によって効果的に制御されている可能性が示唆された。次年度以降で、これらの因子が関わる細胞機能を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リウマチ動物モデルについては、研究開始前の予備検討を基盤として実験条件を確定できた。今後、既報かつ既存の化合物を用いる場合であっても適用する疾患モデルが異なるので、重度のコラーゲン誘導関節炎を惹起するコラーゲンのロットと併せて事前に十分な検討を行う必要がある。 また、培養細胞の実験系については、おおむね実験計画に支障なく、かつデータが順調に得られた。初年度はリウマチ由来のヒト滑膜線維芽細胞の検体が少数のため変形性関節症由来の検体も使用して研究を進めた。念のため、炎症性サイトカイン刺激下の滑膜線維芽細胞増殖には検体の由来が大きく影響しないことを確認した。次年度以降、再現性を含めてリウマチ由来の検体による検証が必要であるが、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
リウマチ動物モデルについては、初年度に確定した条件に加えて臨床で実用されている生物学的製剤の投与条件を確立し病態を解析することで、SPACIA1/CDK6による関節炎の増悪化メカニズムと生物学的製剤の役割の差異を明らかにしたいと考えている。 培養細胞の実験系については、初年度の結果の再現性を含めた検討を進めるとともに、SPACIA1/CDK6が制御する標的遺伝子およびシグナル経路を同定し、滑膜線維芽細胞増殖を制御しうる新たな作用点を示したいと考えている。 次年度は使用内訳の大半を消耗品費として計上し、マウスおよび試薬を購入する。また、国内学会の発表を予定しており、旅費・その他の費用を計上した。
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Causes of Carryover |
当初は費用が掛かると予想された関節炎モデルマウスでの条件検討(マウス・試薬)が順調に進んだため、掛かる費用が予定よりも少なくなった。次年度以降で他の化合物または生物学的製剤を用いた条件検討を進める際の費用として引き続き使用する。また、新型コロナウイルス感染症の影響による輸送遅延の状態が続き、年度末近くに発注した物品の会計処理が終了していないことにより次年度の支払が生じた。
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