2022 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児の反復性尿路感染症における腸内細菌層是正による新規予防法の確立
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21K09361
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
木全 貴久 関西医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90593517)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 尿路感染症 / プレバイオティクス / プロバイオティクス / 急性腎盂腎炎 / 予防的少量抗菌薬投与 / 乳幼児 / 膀胱尿管逆流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスを摂取することで、腸内細菌叢を是正し、fUTIの新規発症予防法を確立することを目的とする。 2022年度は、成人ボランティアに機能性大麦を摂取させ、機能性大麦がプレバイオティクスとして作用し、酪酸産生菌などの有益菌が増加したことから、プレバイオティクスは、有益菌の減少に特徴づけられる腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)の是正に有用である可能性が示唆された。 今回、dysbiosisが、fUTIの発症リスクであるかどうかを明らかにするために検討した。初発のfUTIの乳児23例(月齢中央値5.5か月)をfUTI群とし、抗菌薬投与前の便を採取した。比較対象として、健康乳児11例(対照群:月齢中央値7か月)から便を採取した。fUTIのリスクとなる膀胱尿管逆流などの先天性腎尿路異常を認めた症例は除外した。採取した便検体を用い、次世代シーケンサーで細菌特異的な16S rRNA遺伝子を解析し、腸内細菌叢の多様性や構成菌目を2群間で比較した。結果は、性別及び年齢は2群間で有意差はなかった。腸内細菌叢のα多様性(Shannon指数中央値)は、fUTI群が有意に低かった(fUTI群:3.0、対照群:3.5、p=0.0017)。またβ多様性もfUTI群と対照群は異なるクラスターを形成していた(p=0.021)。さらにfUTI群は対照群よりも腸内細菌叢に占める大腸菌の割合が有意に多かった(fUTI群:中央値9.0%、対照群:中央値3.0%、p=0.0064)。 今回の検討で、fUTIを発症した乳児では腸内細菌叢の多様性が異なり、大腸菌の割合が多く、明らかなdysbiosisを認めた。 2022年度および今回の結果から、プレバイオティクスによるdysbiosisへの介入がfUTIリスクを低下させる可能性が大いにあると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回の検討で、乳児にプレバイオティクスとなる食材を多く用いた離乳食を摂取していただく研究方法であったが、対象が乳児であるため、プレバイオティクスの摂取量の把握が困難であり一定の条件で比較できない可能性が生じている。そのため、乳児でも摂取可能なプレバイオティクスとなる酪酸菌、糖化菌、乳酸菌という3種の菌を含む細粒の摂取を行うことに変更し、同条件で比較検討するために再度対象を集めているため、遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
対象が乳児であるため、プレバイオティクスを多く含む食材の摂取量の把握が困難であり、一定の条件で比較できない可能性が生じたため、乳児でも摂取可能なプレバイオティクスとなる酪酸菌、糖化菌、乳酸菌という3種の菌を含む細粒を摂取することに統一し、腸内細菌叢の是正が、fUTIの発症抑制となるかを検討する。
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