2023 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児の反復性尿路感染症における腸内細菌層是正による新規予防法の確立
Project/Area Number |
21K09361
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
木全 貴久 関西医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90593517)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 尿路感染症 / プレバイオティクス / プロバイオティクス / 急性腎盂腎炎 / 予防的少量抗菌薬投与 / 乳幼児 / 膀胱尿管逆流 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児の膀胱尿管逆流(VUR)は、有熱性尿路感染症 (fUTI)を反復し腎障害を生じ将来腎不全に至る可能性がある。VUR症例は、fUTIの反復予防にST合剤の少量持続的予防内服(CAP)が行われるが、耐性菌が出現する。先行研究の結果から腸内細菌叢における有益菌の比率を増加させ、大腸菌などのfUTIの起炎菌となる菌叢の比率を減じることがfUTIの予防になるのではないかと考えた。そこで本研究では、ST合剤のCAPではなく、プロバイオティクスとプレバイオティクスを摂取することで、fUTIの新規予防法を確立することを目的とする。 まず、成人にプレバイオティクスとして機能性大麦を摂取させた結果、有益菌が増加したことから、プレバイオティクスは、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)の是正に有用である可能性が示唆された。次にdysbiosisが、fUTIの発症リスクであるかどうかを明らかにするために検討した。fUTI群で腸内細菌叢の多様性が有意に低かった。さらにfUTI群は対照群よりも腸内細菌叢に占める大腸菌の割合が有意に多かった。以上から、プレバイオティクスによるdysbiosisへの介入がfUTIリスクを低下させる可能性が示唆された。 そこで、gradeⅢ以上のVURを合併する初発のfUTI患者に対し、ST合剤によるCAPを行った9例と整腸剤(乳酸菌、酪酸菌、糖化菌)のみを内服させた6例の再発率を比較検討した。その結果、ST合剤群は再発はなかったが、整腸剤群は5例が再発をした。再発例の80%は大腸菌が起炎菌であり、整腸剤のみでは再発予防は困難であった。今回対象が離乳食開始前の乳児であり、fUTIの抗菌薬治療でdysbiosisをきたした腸内細菌叢に対して、今回使用した整腸剤のみでは、抗菌薬治療後短期間でdysbiosisの是正が十分できなかった可能性がある。
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