2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子解析からみた前立腺癌家族歴と遺伝性に関する研究
Project/Area Number |
21K09366
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
鈴木 和浩 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80312891)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 前立腺癌 / 家族歴 / HOXB13遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌における家族歴とHOXB13遺伝子変異の関係を検討するため96症例の家族性前立腺癌から得たDNAのサンガーシークエンス法により塩基配列を確認した。G132E、F127C, A212Tが検出された。G132Eはコドン132の第2ポジションの変異で、GGAがGAAすなわちグリシンがグルタミン酸に変異している。F127Cはコドン127の第2ポジションの変異でTTTがTGTすなわちフェニルアラニンがシスチンに変異している。A212Tはコドン212の第1コドンの変異でGCCがACCすなわちアラニンがスレオニンに変異していることが判明した。この結果から144名の非癌コントロール症例、427名の前立腺癌症例においてこれらの3つの遺伝子変異を検討した。427例の前立腺癌症例は、197例の散発性前立腺癌および152発端者を含む。非癌症例コントロール群では、G132EおよびF127Cの変異を1例も認めることはなく、A212Tの変異を1例に認めた。癌症例では、G132Eを家族性前立腺癌で11例、F127Cを家族性前立腺癌で4例、A212Tを家族性前立腺癌3例、散発性前立腺癌2例に認めた。関連解析により、G132E/F127Cの変異は癌症例に有意に高い頻度であった(p=0.032)。さらに、変異を認めた前立腺癌症例では家族性前立腺癌に限られていることが判明した。 HOXB13遺伝子変異はG84Eの変異が欧米で同定されている変異であり、病的意義を認める。今回同定した変異はG132Eがこれまで中国で同定されているが、本邦の症例で初めての同定となる。F127Cはデータベースには掲載されていない変異であり、初めての報告となる。A212Tの変異は今回の検討で癌・非癌での頻度差はなく、病的意義は少ないと想定される。今回の検討で、G132Eが特に本邦の家族歴を有する前立腺癌で特徴的であること推察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はHOXB13遺伝子の変異と家族歴の関係を中心に検討する計画であり、おおむねデータが判明しており、現在論文にまとめて投稿中であり、おおむね順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、HOXB13遺伝子変異症例の臨床的背景と詳細な家族歴との関連をさらに深く検討していく予定である。また、BRCA遺伝子変異の検討に着手しており、前立腺癌の家族歴と多面的な遺伝子変異の関連をクローズアップできるように進めていく。サンガーシークエンス法、シークエンチャーを用いた塩基配列の確定、TaqMan法を用いたSNPの同定などは2021年度と同様に進められるため、サンプル調整から実際の遺伝子解析まで丁寧に時間をかけて進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
2021年度に遺伝子解析に関する消耗品の算定をして提出しました。ほぼ予定どおりの支出となりましたが、7,995円が残額として残ってしまいました。2022年度に計画的に執行する予定です。
|