2022 Fiscal Year Research-status Report
分子病理学的アプローチに基づく男性不妊症に関わるミトコンドリア電子伝達系制御機構
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21K09391
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
栗原 靖之 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80202050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯村 寧 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (30522023)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 男性不妊症 / ミトコンドリア電子伝達系 / 先体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年特に大きな社会的注目を浴びている不妊症のうち、その原因の半数を占める男性不妊症の原因論から迅速な検査法と有効な治療法開発を目指して計画された。我々は精子形成過程でミトコンドリア電子伝達系複合体4のサブユニットタンパク質がCoxfa4からCoxfa4l3にアイソフォームスイッチを起こしていることを明らかにしており、この機能解析が精子形成期特有のATP生産系の解明を通して本研究の目的を達成したい。 これまでの研究成果として、アイソフォームスイッチにより複合体4の活性が優位に増加することがわかった、これは、精子形成後期がほとんど無酸素下であるにもかかわらず、酸素要求性の複合体4活性が増加するという極めて奇妙な現象が起こることを発見した。また、我々はCoxfa4l3タンパク質が男性不妊症患者さんの精子で、本来あるべき精子中片部に加え、先体にも異所的に分布していることを明らかにした。これらの結果を総合して考えると、精子形成期特有のATP生産系とそれに関連した先体形成機構の破綻が精子異常性を起こし、男性不妊症発症に関わっていることを示唆している。また、Coxfa4l3タンパク質の分布解析は男性不妊症の良いマーカーとなることも示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的の一つである精子形成期の特殊なATP生産系の解析は予定通り進行しており、残りの期間でこの成果について公表論文を作成できる見通しである。また、その応用として計画した男性不妊症検査薬開発では、予想以上の成果として先体形成とミトコンドリア機能破綻の関連からCoxfa4l3タンパク質が有望な男性不妊症検査薬ターゲットとなる可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
精子形成期特殊なATP生産系の解析では、なぜ超低酸素下で酸素要求性のミトコンドリア電子伝達系複合体4活性の上昇の分子機構の解明を目指す。男性不妊症検査薬開発では、Coxfa4l3タンパク質の異所的発現と男性不妊症患者さんの精液パラメーターとの相関を試料数を増やしてその開発妥当性を検証していくことにしている。
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Causes of Carryover |
共同研究先では当該年度で新たに消耗品を購入することがなかったため、繰越金が生じた。次年度は、当該研究テーマで利用する試薬類を購入することと、成果をまとめた論文をまとめることになっており、次年度分の共同研究先への配分と合算して支出する予定である。
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