2021 Fiscal Year Research-status Report
腎臓原基腎管系のソニック・ヘッジホッグ自己分泌機構の検証
Project/Area Number |
21K09394
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
城倉 浩平 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (30303473)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 中腎管 / ソニック・ヘッジホッグ / オートクライン / 腎臓 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎臓発生に必須の組織である中腎管と尿管芽は、腎臓再生においても重要な要素と考えられる。中腎管から尿管芽への分化過程では、様々な成長因子シグナルの変化が起こると予想される。細胞外シグナル因子であるソニック・ヘッジホッグは、中腎管と尿管芽が分泌することが知られているが、腎臓発生における役割については未だ十分には解明されていない。本研究では、腎管系のソニック・ヘッジホッグ自己分泌機構を検証し、腎管系分化における役割を調べる。 本年度は、胎生ラット中腎から中腎管とその間葉を採取し、リアルタイムPCR法を用いてソニック・ヘッジホッグの遺伝子発現を調べた。また、中腎管をマトリゲル中に置いて10%牛胎児血清とFGF9で維持した培養系に、ソニック・ヘッジホッグまたはそのシグナル阻害剤を添加して24時間培養し、リアルタイムPCR法で遺伝子発現解析を行った。結果をこれまでの予備的な実験と合わせて評価した。 FGF9による中腎管培養を10日間継続した場合では、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子発現は増加傾向を示して良好に維持された。この中腎管培養にソニック・ヘッジホッグを添加すると、受容体型チロシンキナーゼRetの遺伝子発現が上昇傾向を示した。また逆に、阻害剤を添加してソニック・ヘッジホッグシグナルをブロックした場合には、Ret発現は低下傾向を示した。 FGF9とソニック・ヘッジホッグの濃度条件を再検討して行った培養実験では、24時間後の中腎管のRet発現は有意な上昇が認められた。Retは、後腎間葉が分泌するグリア細胞由来神経栄養因子の受容体であり、中腎管と尿管芽に発現して、腎臓発生において中心的な役割を担う分子である。 これらの所見から、中腎管には、自身が分泌するソニック・ヘッジホッグを受容して応答する自己分泌作用が存在する可能性が示唆され、検証を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響等により、他の業務に携わる時間が増加し、本研究に予定していた時間を十分に充てることができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では、中腎管のソニック・ヘッジホッグ遺伝子発現量と、ソニック・ヘッジホッグ添加による遺伝子発現変化を観察した。この結果に基づき、ソニック・ヘッジホッグ受容体や細胞内シグナル伝達に関わる因子が、中腎管に実際に発現しているかを確認していく予定である。 また尿管芽で解析を行い、この結果と比較して、ソニック・ヘッジホッグ自己分泌作用の検証、中腎管から尿管芽への分化過程で起こる変化の解明を進めていく。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症等の影響により実験計画に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、令和4年度請求額と合わせて、消耗品、旅費、学会参加費などとして使用する予定である。
|