2021 Fiscal Year Research-status Report
キチンナノファイバーを用いた即効性手術用止血剤の開発
Project/Area Number |
21K09397
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
武中 篤 鳥取大学, 医学部, 教授 (50368669)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森實 修一 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (50419496)
伊福 伸介 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (70402980)
大林 徹也 鳥取大学, 研究推進機構, 准教授 (80348804)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | キチン / キトサン / ナノファイバー / 止血剤 / 抗菌性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノファイバースポンジの作製と評価方法:キチンナノファイバー水分散液に対してキトサンを溶解した。分散液を型に充填し、NaOH溶液中に浸漬し、流動しないハイドロゲルを得た。その後、溶媒置換して得られたアルコゲルを凍結乾燥し、キチンナノファイバースポンジを作製した。作製したスポンジについて、SEM観察、比表面積、細孔直径、吸水率、乾燥・湿潤状態における圧縮強度を評価した。また、止血効果と溶血性評価ならびに大腸菌と黄色ブドウ球菌を用いた抗菌活性評価をおこなった。 キチンナノファイバースポンジの物性評価結果:スポンジの比表面積はナノファイバー濃度の増加に伴い増加した。一方で、約2~100 nmにおける平均細孔直径は減少した。スポンジの最大吸水率は比表面積の増加に伴い吸水率が増加した。スポンジの弾性率はナノファイバーとキトサン濃度に依存して増加した。また、湿潤状態でもスポンジの形状を維持していたことから、生体環境中でも適用可能であることが示唆された。 キチンナノファイバースポンジの止血効果・溶血性評価結果:ナノファイバーの濃度が高いと血液凝固指数は低下した。すなわち、血液凝固効果が高くなった。スポンジ表面には多くの赤血球が付着していた。また、ナノキトサンの濃度に依存してより多くの赤血球が付着していた。ナノファイバーによる比表面積や正電荷が寄与していると示唆される。また、ほとんどのスポンジが非溶血性を示した。 キチンナノファイバースポンジの抗菌性評価:スポンジは黄色ブドウ球菌と大腸菌の両者に対してキトサンのみのスポンジよりもコロニー数が少なく、高い抗菌活性を示した。これは、キチンナノファイバーの正電荷が負に帯電した菌細胞表面と相互作用するためである。特に黄色ブドウ球菌に対してより効果的であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
キチンナノファイバーは表面を部分的に脱アセチル化したものを用いた。これは表面がキトサンに変性している。脱アセチル化によって、表面がカチオン性に帯電している。それに伴い、水中での分散性の向上、架橋剤との反応性の向上、血球との相互作用による止血効果、菌の増殖を抑える制菌効果などの効果が付与できた。キチンナノファイバーについて科学的な架橋反応では現時点では十分な強度が得られていないため、物理的なゲルを作成して、実用に耐えうる強度の止血剤が得られた。このゲルを用いて、来年度以降に予定している血液凝固効果を評価したところ、血球の顕著な吸着が認められた。また、溶血性についても良好な結果が得られため、当初の計画以上に研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、生体適合性および操作性に優れた止血剤作製条件を探索する。止血剤の接着性能の評価に関して、破裂圧試験を行う。モデルとして使用したコラーゲン膜に一定の長さの傷(切開部分)を作成し、その部分を本研究での止血剤を用いてシーリングした後、圧力を加えて、破裂時点での圧力を測定することで、接着・シーリング性能を評価する。一方、ラットを用い、イソフルランによる麻酔処置後皮下への止血剤の埋め込みを行い、新規止血剤の操作性を確認する。また、埋め込み後3、7及び14日後の埋め込み部位の肉眼的・病理組織学的な観察を実施し、止血剤の生体適合性を確認する。
|
Causes of Carryover |
キチンナノファイバーによる手術用止血剤の開発が予想以上にスムーズに進行したことで、金額の余剰が生じた可能性がある。2022年度は破裂圧測定装置を用いた圧力耐久性能評価や動物実験での止血評価などを予定しており、今後、キチンナノファイバーを用いた製剤の改良が必要となる可能性は高い。
|
Research Products
(1 results)