2023 Fiscal Year Annual Research Report
Treatment research by the suppression of secretory phenomenon associated with cellular senescence in mouse prostate cancer model
Project/Area Number |
21K09409
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井手 久満 順天堂大学, 医学部, 特任教授 (00301383)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢と伴に体内に蓄積した老化細胞はさまざまな炎症性蛋白質を高発現し周囲に分泌する細胞老化随伴分泌現象:SASP (Senescence-associated secretory phenotype)を引き起こす。老化細胞ではDNAメチル化酵素やヒストンメチル化酵素の発現低下によってエピジェネティックな遺伝子発現抑制機構が破綻し、様々なSASP遺伝子の発現が誘導される。本研究では、新規前立腺癌発症モデルであるDNA脱メチル化酵素UTXを前立腺特異的にノックアウトしたマウスを用いて、脂肪負荷と老化によるSASPが前立腺癌細胞の悪性化や去勢抵抗性獲得に関与しているのかを検証した。モデルとして、前立腺特異的なUtx欠失マウスを作製し、前立腺でUtxを欠失したオスマウスでは、脂肪食によるストレスから前立腺癌の発癌がみられた。前立腺がんは8~9週後に発生し、前立腺癌の悪性度はGleason grade 3~4であった。また、p53KOマウスとの掛け合わせにおいて、より発癌が促進された。老化マーカーとして老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ(SA β-Gal)を用いて免疫組織化学染色的に評価したところ、発癌に伴いSA β-Gal陽性細胞の増加がみられた。これらの研究結果から、Utx欠失マウスにおいて、SASPを介した癌の進展機構が推察された。ヒストン・クロマチン修飾因子を標的とした前立腺癌モデルマウスはまったく新しい疾患モデルになると考えられ、SASPの解析とともに得られた結果は前立腺癌発症の分子機構に新たな知見をもたらし、新規治療法開発に役立つ可能性が期待される。
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