2021 Fiscal Year Research-status Report
代謝型グルタミン酸受容体を介した射精調節の神経回路
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21K09420
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
時田 美和子 (馬杉美和子) 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (10420712)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | mGluR7 / 射精 / グルタミン酸受容体 / 脊髄切断 / 勃起 / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでの研究により、代謝型グルタミン酸受容体7型欠損マウス(mGluR7 KO)のオスが、ホルモン投与により発情させたメスマウスに対して嗅ぎ行動、マウンティングおよび挿入行動をするにもかかわらず射精にいたらないことを見いだした。この結果はmGluR7 KOが性的なモチベーションを持つにもかかわらず、射精できないことを示唆する。本研究の目的は、mGluR7の射精調節に関与する回路を明らかにし、さらにmGluR7がどのようなメカニズムでその回路を調節しているのかを解明することである。 抗mGluR7抗体を用いた免疫標識により、射精中枢が存在する腰・仙髄にmGluR7が存在することをすでに見いだしている。この部位に存在するmGluR7が直接射精を調節するかどうかを検証するために、胸髄レベルで脊髄を切断することで脳の影響を除外し、薬剤誘発性射精による射精の頻度および射出量を野生型マウスとmGluR7 KOで比較する実験を計画した。脊髄切断マウスは自力で排尿することができないため、用手的に腹部を圧迫することで排尿を補助する必要がある。腹部を圧迫した時にmGluR7 KOでは勃起反射が亢進していることが観察された。また、薬剤誘発射精に対する反応もmGluR7 KOで亢進していた。すなわち切断手術を行っていないmGluR7 KOでは射精ができなくなっていたのにもかかわらず、脊髄切断をすることでmGluR7をノックアウトすることの効果が逆転して、勃起および射精が亢進した状態になることが明らかになった。この結果は、予想に反するものであるが、同時に非常に興味深いものである。前年度までにすでにこの傾向はつかめていたが、本年度の研究により再現性も確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄切断実験は、手技も複雑で、実験後に完全に切断できていることが確認できたもののみを論文のデータにしているため、論文にするためのデータを集めるには時間がかかる。脊髄切断実験について再現性も確認できたため、現在、行動実験の部分について結果をまとめて論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄切断マウスの行動実験がほぼ完了したので、次に形態学的解析を行う。射精に関与する分子とmGluR7の関係を免疫組織化学で解析する。射精中枢であるlumbar spinothalamic cells (LSt cells)は、以前から射精への関与がしられていた交感神経、体性神経だけでなく、副交感神経にも投射し、射精を誘起する。その近傍にmGluR7の強い発現が観察されることをすでに報告した。 脊髄切断によりmGluR7の効果が逆転するという結果は、脳から脊髄への投射にmGluR7が関与する可能性を示唆する。そこで、脳から脊髄に投射して射精を調節することが報告されているセロトニンや、オキシトシンなどの神経線維との関係を中心に解析する。
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Causes of Carryover |
今後は形態学的解析を主に行うため、多くの抗体を購入する必要がある。しかしながら、購入可能な抗体は、組織の免疫標識に堪えない品質のものが非常に多く、事前の情報収集が大切になるため時間を要した。また、結果を確認しながら、少しずつ購入しているため、少額の次年度使用額が発生した。
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