2023 Fiscal Year Research-status Report
尿路感染におけるHMGB1の動態解析と尿中特異マーカーの可能性に関する探索的研究
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21K09425
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
和田 耕一郎 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (20423337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 亜矢乃 岡山大学, 大学病院, 准教授 (00423294) [Withdrawn]
定平 卓也 岡山大学, 大学病院, 助教 (20733322) [Withdrawn]
花井 幸次 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (60912730)
渡邉 豊彦 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 教授 (30432644)
和田里 章悟 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター(臨床研究部), 医師 (80833277) [Withdrawn]
小川 貢平 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (90868556)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | HMGB1 / 尿路感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究責任者の異動もあり、研究の実績としては情報取集と動物実験、臨床研究の立案にとどまっている。 情報取集はHMGB1と感染症について、泌尿器科領域を中心に論文検索や学会参加によって行った。現時点で、やはりHMGB1の尿中バイオマーカーとしての研究報告は見られず、本研究の方向性と先進性が維持されていることを確認している。 動物実験ではラットおよびマウス(詳細は後述)を用いたHNGB1の糸球体におけるろ過および再吸収に関する研究を行ってきた。血液量と尿量を比較的多く確保できるラットを用い、静脈内投与したヒトHMGB1の量と血中濃度、尿中HMGB1の濃度と総排泄量について検討した。当初はHMGB1の測定について、PAHをコントロールとしてLC/MSで測定することを試みたが、PAHの測定がうまくできなかったことから、ELISAキットで実施することとした。ELISAキットを選別し、ラット由来のHMGB1を測定できることを確認し、ラット静脈内に投与されたヒトHMGB1の尿中濃度の測定を試みた。また、四塩化炭素を吸入させた肝障害モデルも作成し、血中及び尿中のHMGB1濃度の測定を実施した。結果として、一定量のHMGB1が尿中において測定されることが判明したが、投与したヒトHMGB1のみならず、ラット由来のHMGB1が関与していることが示唆された。また、四塩化炭素による肝障害が他の報告のように惹起できず、尿中HMGB1の測定にまで至らなかった。これらの結果から、ラットでの実験に限界があるとの結論に達した。そこで、海外から比較的多くの報告がなされているマウスでの実験に移行することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度は動物実験を中心に研究を実施し、臨床研究は立案にとどまった。 動物実験は、正常な健康動物にヒトのHMGB1を静脈内投与し、尿中への排泄について検討を行った。前年度はラットを用いた検討を行っており、血中と尿中HMGB1の測定系の確立に多大な時間と手間を要したことから、2023年度はマウスを用いた検討を実施することとした。マウスは血液量と尿量がラットより少ないため、専用のケージと採尿法を用いて検討した。その結果、静脈内投与したヒトHMGB1の尿排泄量は10%未満であることが明らかとなった。微量ではあるが排泄されている原因として、ヒトHMGB1とマウス糸球体ろ過・尿細管での再吸収において、過ろ過や再吸収不全が起きている可能性、異種蛋白が投与されたことによる反応性の内因性HMGB1の産生、などが考察された。その結果を踏まえ、マウスのHMGB1を購入して再検討を実施するとともに、ヒトの臨床研究で得られる非尿路感染症患者で尿中排泄量についても検討していく方向で、チーム内で討議を重ねている。 臨床研究については、余剰検体を用いた観察研究を実施する方向で調整した。発熱患者の原因として有熱性尿路感染症と診断することは臨床的に困難である場合が少なくない。それを容易に可能とするのが本研究の目的であるが、どういった集団から血液と尿の余剰検体をストックし、臨床経過と血中・尿中HNGB1を測定してバイオマーカーとしての可能性を検討するのか、というのが最も難しい点である。候補としては尿路カテーテル留置中で画像診断で他の感染症が否定された患者、泌尿器科手術後の患者を最も有力な候補として挙げている。同時に、ヒト血液と尿のサンプルにHMGB1を段階希釈し、正確に測定できるELISAキットの選定および測定限界値を割り出した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初の予定より遅れているが、まず臨床研究を早期に取りまとめ、本学で審査後に臨床研究を開始する。すでにサンプルサイズも決定しており、準備はほぼ完了している状態である。本年秋までに一定数の血液、尿サンプルを取集し、HMGB1の濃度測定と解析を実施する予定である。動物実験については、マウスにおけるHMGB1の排泄量が少なかったことから、N数を増やして再度検証する予定である。また、可能なら排泄された蛋白の質量分析に再度挑戦し、尿中蛋白が投与されたHMGB1であることの確証を得たい考えである。 臨床検体の収集に手間取った場合や、動物実験での再検証に時間を要する場合には、1年の研究期間延長を申請し、動物実験の結果も合わせて学会報告と論文作成を行い、次の研究の立案と展望について検討したい。
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Causes of Carryover |
ラットの実験が当初の計画よりうまくいかず、ラットの研究に切り替えたことで実験動物の購入予算に余剰が生じた。また、LC/MSによる質量分析でHMGB1を同定、測定する計画であったが、対象となるPAHの測定がうまくいかなかったことで、使用予定であった経費に少額の余裕がでた。国内外の出張による情報収集と学会報告に達するのが遅れたため、出張経費を使用する額が当初の予定額を下回った。以上から、2023年度に使用予定であった研究費を全額使用することなく、2024年度を迎えることとなった。
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