2022 Fiscal Year Research-status Report
低侵襲・効率的な胎内サイトメガロウイルス感染症診断のための新たなアルゴリズム開発
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21K09452
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
金子 政時 宮崎大学, 医学部, 教授 (40264387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 良宜 宮崎大学, 教育学部, 教授 (10218985)
森下 和広 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 特別教授 (80260321)
中畑 新吾 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 教授 (80437938)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サイトメガロウイルス / CMV IgG avidity / 先天性サイトメガロウイルス感染症 / 妊婦スクリーニング / ELISPOTアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
妊婦の妊娠前の抗体保有状況と先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症の発生との関係について前方視的コホート調査を行った。1163人の妊婦の内、IgG(+)/IgM(-)群は929名(79.9%)、IgG(+)/IgM(+)群は40名(3.4%)、IgG(-)/IgM(-)群は194名(16.7%)であった。さらに、IgG(+)/IgM(+)群40名の内、high IgG avidity index(AI)の妊婦は、31名、Low IgG AIの妊婦は9名であった。妊娠前にCMV抗体を保有していたnon primary infectionの妊婦は960名(82.5%)となり、この群から2名の胎内感染児が出生していた(発生率0.2%)。一方、IgG(+)/IgM(+)およびLow IgG AIの妊婦9名から2名の胎内感染児が出生した。さらに、IgG(-)/IgM(-)群から1名が妊娠中に抗体が陽転化(陽転化率0.5%)し、胎内感染児を出生した。妊娠前に抗体陰性妊婦からの胎内感染児の発生率は1.4%(3/203)であった。胎内感染児のリスクは、妊娠前に抗体陰性の妊婦の方が、抗体保有妊婦と比較して有意に高値であった。この結果を、post-hoc power検定を行い検出率についても評価した。post-hoc power検定を含めてフランスおよびフィンランドから出された同様の結果と比較した結果、2つの国から出された結果と同様に妊娠前にCMV抗体陰性者の胎内感染児出生のリスクが高いことを証明した(JIC 2023, 29, 485-489)。 胎内感染の新たな診断法としてのELISPOTアッセイ法の評価に関しては、妊婦107名からデータを収集し、preliminaryな結果であるが、胎内感染児の母体では、妊娠期間中を通してELISPOTの反応は弱い傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠前に抗体を保有していない妊婦の胎内感染児出生のリスクをpower検定を行い証明した。このことは、妊婦CMV抗体スクリーニングを行い、抗体陰性者への衛生指導を行う重要性の根拠となる。また、現在取り組んでいるELSIPOTアッセイを組み入れた胎内感染児を診断するためのフローチャート作成の意義にも繋がった。 ボランティア妊婦の数も順調に増えて、血液検体の解析を進めることができている。胎内感染例も3名含まれており、今後の解析に使用できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況は概ね順調である。ボランティア妊婦の検体収集およびELISPOTアッセイの実施については、週2回のペースを維持して行う予定である。今後の課題は、本県で発生する胎内感染例の集積である。胎内感染例の検体については、胎内感染例の発生が少ない上に、無症候性感染例が存在するために検体数の増加を図ることは容易ではない。これに関しては、2022年度末から学内の全新生児を対象とした新生児尿を使用したスクリーニングを開始した。また、新生児聴覚スクリーニング事業から判明した胎内感染例の母体からの検体収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度の繰り越し分を入れて、令和4年度は研究を施行した結果、ほぼ同額分が次年度への繰り越しとなった。令和5年度は、コロナパンデミックによる影響が少なくなり、学術集会等での発表機会が増える。また、成果を論文発表する予定である。このような目的に次年度は、予算を執行する予定である。
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