2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the pathophysiological functions of C-mannosyl tryptophan in ovarian cancer
Project/Area Number |
21K09476
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
井原 義人 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70263241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井内 陽子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20316087)
池崎 みどり 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40549747)
南方 志帆 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (90508574)
眞鍋 史乃 星薬科大学, 薬学部, 教授 (60300901)
岩橋 尚幸 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50750907)
山本 円 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (70596973)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | C-マンノシル化 / 卵巣がん / 糖タンパク質 / 糖鎖修飾 / 腫瘍マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
C-マンノシル化(C-Man化)はタンパク質中のトリプトファン(Trp)に付加する新しいタイプの糖修飾構造であり、代謝物のC-Man-Trpとともに生体機能が注目されている。我々は、卵巣がん患者におけるC-Man-Trp血中濃度の上昇を報告したが、その病態生理的意義は未解明である。本研究では、「マウス卵巣がん腹膜播種モデル」を用いて、タンパク質C-Man化の誘導に関連する遺伝子の同定と病態生理機構の解析を行い、「卵巣がん患者検体のC-Man-Trp測定」を通じて臨床データとの関連を解析することで、タンパク質C-Man化の卵巣がんにおける異常代謝と病態生理機能の解明を目指す。 本年は、「マウス卵巣がん腹膜播種モデル」を用いて、卵巣がんの腹膜播種過程でC-Man-Trpの産生増加に寄与するマウス体内の細胞の同定を試みた。マウス腹腔組織や腹水中の細胞を回収し、各種細胞サンプルから低分子タンパク質抽出分画やRNA分画などを調製、解析した。C-Man-Trpは通常培養条件の卵巣がん細胞に比べ、腫瘍塊組織や腹膜腫瘍組織で有意に増加していることがわかった。一方、腹水中の細胞では、腫瘍関連マクロファージ(TAM)とそれ以外の細胞の両者でC-Man-Trpレベルの増加が明らかとなった。さらに、腹膜播種前後での正常腹膜組織と腹膜腫瘍組織における遺伝子発現の変化についてmRNA-Seq解析を行い、腹膜腫瘍組織において、mRNAレベルが有意に増加したC-Man化タンパク質の候補遺伝子を複数同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス卵巣がんOV2944-HM-1(HM-1)細胞を用いたマウス腹膜播種モデルによる準備研究において、がん細胞の腹膜播種後、血清C-Man-Trpレベルの有意な上昇を認めた。そこで、卵巣がんの腹膜播種過程でC-Man-Trpの産生増加に寄与するマウス体内の細胞の同定を試みた。卵巣がんあるいはリン酸緩衝生理食塩水をマウス腹腔に接種し、10日後に、血清、腹水、腫瘍塊組織、腹膜腫瘍組織を回収した。腹水中から得られた細胞をセルソーターによりF4/80(+)の腫瘍関連マクロファージ(TAM)とそれ以外の細胞F4/80(-)を選別した。各種細胞サンプルから低分子タンパク質抽出分画やRNA分画などを調製した。1)低分子タンパク質抽出分画のC-Man-Trpレベルを解析したところ、C-Man-TrpはHM-1細胞に比べて腫瘍塊組織で、コントロールの腹膜組織に比べて腹膜腫瘍組織で有意に増加していた。一方、腹水中の細胞では、腫瘍関連マクロファージ(TAM)とそれ以外の細胞の両者でC-Man-Trpレベルの増加が明らかとなった。2)腹膜播種前後での腫瘍塊組織や腹膜腫瘍組織における遺伝子発現の変化をmRNA-Seq解析で検討した。腹膜腫瘍組織においてmRNAレベルが有意に増加した遺伝子から、分泌タンパク質をコードする169遺伝子を選択し、NetCGlyc-1.0解析を用いて、C-Man化タンパク質をコードする複数の候補遺伝子をさらに絞り込んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、C-Man-Trpは、HM-1細胞に比べて腫瘍塊組織で、コントロールの腹膜組織に比べて腹膜腫瘍組織で有意に増加していた。一方、細胞内のC-Man-Trpレベルは、TAM細胞に加えて、非マクロファージ系細胞でも増加していたことから、両細胞において腹膜播種条件で誘導されるC-Man-Trp産生の分子機構の解析を進めていく。また、がん細胞の腹膜播種に伴い発現レベルの増加したC-Man化糖修飾を受ける候補分子mRNAが選定されたことから、個々の分子の発現と遊離C-Man-Trp産生機構の解析を行う予定である。 一方、細胞外のC-Man-Trpによる卵巣がん細胞機能への影響に関する研究として、マウス卵巣がんHM-1あるいはヒト卵巣がんSKOV-3などの細胞株を用いて、C-Man-Trpおよび関連化合物の添加による細胞増殖、細胞接着、細胞浸潤などの機能への影響についての解析を行う予定である。また、細胞外のC-Man-Trpのマクロファージ細胞機能への影響についても、1)THP-1細胞のマクロファージ分化モデルや、2)分化後THP-1細胞(M2)の自然免疫刺激応答性に対して検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
種々の実験に使用する試薬、抗体および細胞培養試薬、消耗品については、キャンペーンなどを利用するなどして節約に努めたため、当初の予定金額より支出は抑えられたことから、次年度使用額が生じた。 研究費の繰越分は、マウス腹膜播種におけるC-Man-Trp産生の分子機構の解析や、C-Man化糖修飾を受ける候補分子の発現と遊離C-Man-Trp産生機構の解析、細胞外のC-Man-Trpによる卵巣がん細胞機能およびマクロファージ細胞機能への影響に関する研究に必要な生化学研究試薬に使用する。 また、国内外の学会における積極的な成果発表、研究成果の論文発表の為の掲載料等に使用する予定である。
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