2022 Fiscal Year Research-status Report
ハイドロゲルを用いたがん幹細胞形質の誘導と新規治療標的の探索
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21K09485
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡利 英道 北海道大学, 医学研究院, 教授 (10344508)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 幹細胞 / ハイドロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、引き続き卵巣癌細胞株を用いたハイドロゲルによるがん幹細胞形質の誘導について検討を継続した。 多種類のハイドロゲル(DN、PAMPS、PDMAAm、PCDME、PNaSS)を用いて3種類の卵巣癌細胞株(KF28、OVCAR3、OVSAHO)からがん幹細胞様の細胞を誘導できるかについて、対照群(polystylene培養皿上での培養細胞)と比較検討した。 その結果、DN、PAMPS、PDMAAm、PCDMEの各ハイドロゲルを用いて培養した場合には、各卵巣癌細胞株を用いたがん幹細胞様形質の誘導について必ずしも再現性のある結果を得ることはできなかったが、PNaSSハイドロゲルを用いて培養することで、全ての卵巣癌細胞株からがん幹細胞様形質を安定的に再現性をもって誘導できることを確認した。具体的には、対照細胞群において観察される通常の2次元での平坦な増殖形態に比べ、PNaSS培養群のがん細胞は球状に変化し、集まって簇状に増殖する形態、すなわちスフェロイドを形成し、細胞増殖速度が対照群に比べて遅延することが確認された。さらに、がん幹細胞のマーカー分子であるSox2、Nanog、Oct3/4のmRNA発現がPNaSS培養群で明らかに上昇することがreal time PCR法によって確認された。 さらに、抗がん剤感受性の変化について、抗がん剤耐性に関与することが知られている遺伝子であるMDR1ならびにがん細胞の浸潤能、転移能の変化について、上皮間葉転換を通じて浸潤・転移に関与する遺伝子であるtwistの発現について検討したところ、PNaSS培養群では対照群に比べて、顕著に上昇することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣癌の幹細胞を安定的に誘導できる系を確立することができたため、今後は順調な結果を得られることが予想されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに以下の検討を行う予定である。 ①in vivoでの腫瘍形成能の違いを検証する。 ②PNaSSゲルによって誘導された細胞と対照細胞からそれぞれtotal RNAを抽出し、マイクロアレイ法を用いて網羅的遺伝子発現解析を行う。特異的に変化(過剰発現および発現低下)している遺伝子を同定し、標的遺伝子ががん幹細部の性状を調節する上で重要な役割を果たしているかどうかをin vitroの実験系で検証する。 ③PNaSSゲルによるがん幹細胞内シグナル伝達経路の活性化を特定する。
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