2021 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖伸長抑制因子「バイセクト型糖鎖」の雄性生殖細胞分化制御能の解析
Project/Area Number |
21K09503
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉武 洋 順天堂大学, 大学院医学研究科, 非常勤講師 (00396574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 慶彦 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (70250933)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイセクト型糖鎖 / 抗精子抗体 / NUP62 |
Outline of Annual Research Achievements |
原因不明の不妊症患者血清中では抗精子抗体が検出されることがある。我々は新規抗精子抗体標的抗原の探索を目的に、特に人為的操作を加えずに2年以上飼育した老齢雄マウスの脾細胞を用いて、マウス成熟精子頭部に反応する自己抗体由来の単クローン抗体Ts4を樹立し、さらに本抗体がバイセクト型N-アセチルグルコサミン(bisecting GlcNAc)構造を有するフコシル化2本鎖複合型糖鎖への結合を介して複数の糖タンパク質を認識することを明らかにした。Bisecting GlcNAcはGlcNAc転移酵素III (GnT-III)によって付加される。GnT-IIIは卵巣癌や肝癌などの悪性腫瘍やアルツハイマー病患者の脳において発現量が増加していることが報告されており、GnT-III/バイセクト型糖鎖と疾患との関係が注目されている。その一方、正常組織でのGnT-III/バイセクト型糖鎖の生物学的機能については未だ不明である。これまで我々は、成熟精子ではTs4はα-N-acetylglucosaminidaseを含む6種類の、また精巣内ではTEX101をはじめとする複数の糖タンパク質を認識することを報告してきた。 これらに加え、最近我々は核膜孔複合体を構成するタンパク質であるnuclear pore glycoprotein p62 (NUP62)を、精巣におけるTs4認識分子の1つとして新たに同定した。そこで本研究では、NUP62を介した雄性生殖細胞形成過程におけるバイセクト型糖鎖の分子生物学的機能を明らかにすることを目的とした。その解析ツールとして、我々はまずマウス及びヒトに共通する抗原ペプチドを作製し、これをウサギに免役することにより複数の多クローン抗体を樹立した。現在、免疫組織学的解析やウェスタンブロット解析等を用いて、本抗体の反応性を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が目指す最終目的は「生殖過程で発現するbisecting GlcNAc分枝型糖鎖の生理活性」を明らかにすることである。そのために本申請研究ではこれまでの先行研究成果を基盤として「Ts4反応性バイセクト型糖鎖が多様な分子の機能調節を介し受精成立に寄与する」という作業仮説を検証する。そのためにTs4反応性バイセクト型糖鎖が付加された糖タンパク質の一つであるNUP62を介した本糖鎖構造の生物学的機能を解析中である。本年度はその解析ツールの一つとして抗NUP62抗体の樹立に成功した。従って本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回樹立した抗NUP62抗体を用いて、本分子を介したTs4反応性バイセクト型糖鎖の生物学的機能を解析する予定である。さらにTs4抗体による免疫沈降法及び高速液体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて、TEX101、α-N-acetylglucosaminidase、NUP62以外のTs4反応性バイセクト型糖鎖が付加された糖タンパク質の同定をさらに進める予定である。
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Causes of Carryover |
複数存在するTs4対応抗原の中で、今回注目したNUP62の分子性状解析を優先したため、費用が最もかさむ他の糖タンパク質同定のための免疫沈降法及び高速液体クロマトグラフィー/質量分析法を予定回数行わなかったため、次年度使用額が生じた。 今後、未知のTs4対応抗原同定のための免疫沈降法及び高速液体クロマトグラフィー/質量分析法に使用予定である。
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