2022 Fiscal Year Research-status Report
子宮内膜症・子宮腺筋症に起因した周産期合併症の克服を目指した研究
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21K09510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甲賀 かをり 東京大学, 医学部附属病院, 病院診療医(出向) (10396723)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 妊孕能 / 周産期予後 / 子宮腺筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの研究を行った。 1つ目の研究は、女性が妊娠を希望するかなり以前から子宮内膜症に罹患し、その女性の妊孕能が影響を受け続けるという、現代の女性の健康問題を模倣した新しい子宮内膜症モデルマウスを確立することを目的とした。 子宮内膜症は、同種のマウス子宮を細切したものを腹腔内に注入することで成立した。 1または43日後に交配を開始した(それぞれYoung、Aged試験とする)。 マウスは18dpcで安楽死させた。 子宮内膜症病変の重量を測定した。 Young試験では、出産数および児体重は両群で同程度であった。 Aged試験では、子宮内膜症は対照群と比較して、胎内死亡率が有意に多く、体重が有意に低かった。 母獣あたりの子宮内膜症病変の総重量は、Aged群ではYoung 群に比べ有意に低かったが、病変が全くないマウスは1匹もいなかった。 2つ目の研究では、定量的解析や周産期アウトカム研究に適した腺筋症のモデルマウスを確立した。片角の子宮壁を機械的に穿刺した(子宮腺筋症角)。 もう一方の角は穿刺しないままとした(対照角)。 マウスは14日目(D14)または65日目(D65)に安楽死させた。 病変を測定した。 細胞増殖と線維化は、それぞれKi67染色とMasson's trichrome染色で評価した。 血管はCD31免疫染色で検出した。 マウスを交配させ、出産日、産仔数、着床数、産後病変の数と体積を測定した。角あたりの病変数はD14とD65の間で差がなかった。 病変(上皮・間質)の体積はD14よりD65の方が有意に大きかった。病変部の上皮部分のKi67陽性細胞の割合は、D14で有意に高く 間質部ではD65で有意に高かった。 病変部の血管密度、線維化領域はD65で高くなった。 産日は、同系統の健康なマウスの報告よりわずかに早かった。 産子サイズは論文で報告されたものよりも小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のような予定通りの成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内膜症モデルについては、上述の合併症が起きた原因を探索するために、胎児、胎盤、母獣の腎臓、肝臓等の遺伝子・蛋白発現を網羅的に解析する予定である。また胎盤については、組織学的な検討を行う予定である。また妊娠前のマウスを用いて、子宮内の線維化や老化、プロゲステロン抵抗性等についても検討したい。
子宮腺筋症モデルについては、ドナー胚を用いた胚移植により、周産期合併症が子宮に由来するものか、卵巣によるものかを判断する。また上述の子宮内膜症モデルと同様、妊娠前の正所性子宮内膜の状態についても検討したい。
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Causes of Carryover |
予定していた解析の検体提出が遅れたため、当該年度に予算を消費しきれなかった。
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