2022 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞癌に対する機能性ナノ粒子を応用した新規治療法の開発
Project/Area Number |
21K09513
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
天野 創 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (20613467)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子宮内膜症関連癌 / 卵巣明細胞癌 / 機能性ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣明細胞癌に対する新規治療の確立を目指して研究を進めている。卵巣明細胞癌は、子宮内膜症を発生母地とする本邦に多く見られる卵巣癌の亜系で化学療法抵抗性であり再発・進行症例で予後が不良であることが分かっている。 昨年度は卵巣明細胞癌にビタミンAの代謝酵素であるレチノールデヒドロゲナーゼ10(RDH10)が特異的に発現することを多数の臨床検体を用いた免疫染色と明細胞癌細胞株を持用いたウエスタンブロッティングにて明らかとした。さらにRDH10が、糖新生代謝酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)を介して卵巣明細胞癌の細胞質内グリコーゲン貯留に大きく寄与し、癌細胞の幹細胞能獲得や治療抵抗性に関与していることをRNA干渉を用いたRDH10阻害細胞株に対するPAS染色やウェスタンブロッティングを用いて新たに同定した。さらにPEPCK阻害剤を用いたPEPCKの抑制によって卵巣明細胞癌の細胞質内グリコーゲン貯留が低下することも明らかとした。PEPCK阻害剤は、卵巣明細胞癌の細胞増殖を抑制しスフェア形成能を低下させることも明らかとなった。これらの実験結果はPEPCKiが卵巣明細胞癌の治療候補薬になることを示唆するものである。上記に記載した研究の成果については、論文を執筆しcancer biomarker誌に掲載された。(Retinol dehydrogenase 10 contributes to cancer stemness and intracellular carbohydrate storage in ovarian clear cell carcinomas.Murakami A, Amano T, et al.Cancer Biomark. 2022;34(4):673-679.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように卵巣明細胞癌に対する新たな治療標的分子の同定に至りcander biomarker誌に論文を掲載した。そこまでは計画通り順調であった。しかしながら治療標的分子を阻害する薬剤を同定するには至っておらず平面培養下の実験では良好な結果が得られなかった。平面培養という実験系に不備があると考えられたため、卵巣明細胞癌由来オルガノイドを作成し薬剤スクリーニングを行う方針としたため少し遅れが生じてしまった。しかし既に卵巣明細胞癌オルガノイドの作成には成功しているため、遅れはわずかであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年までの実験結果からRDH10の阻害剤は現在同定されていないが、PEPCK阻害剤は明らかとなっておりこれが卵巣明細胞癌の治療候補薬となり得ることが明らかとなったためPEPCK阻害剤によって卵巣明細胞癌の増殖が抑制されるかを平面培養細胞実験を行い確認したが良好な結果は得られなかった。原因として平面培養系で環境は生体内と大きく異なることが考えられた。そこでより生体に近い環境下での実験を行うため卵巣癌由来オルガノイドを作成することとし現在初期培養に成功している。また効率的なドラッグデリバリーシステム構築のためキャリアとして多孔性メソポーラスシリアの作製については完了しているが、まだ薬剤を担持させるには至っていない。今後はまず、卵巣明細胞癌由来オルガノイドを用いて卵巣明細胞癌における糖代謝に関連するの複数の薬剤(PEPCK阻害剤など)についてドラッグスクリーニングを行い有効な薬剤を同定した上でメソポーラスシリカナノ粒子への担持を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延に伴い、学会がオンラインとなったため出張交通費や宿泊費用が当初予定より少なくなった。物品費については当初、令和4年度計画では、卵巣明細胞癌に対するPCK1阻害剤の細胞実験でそこ効果を確認し、動物実験やメソポーラスシリカへの薬剤担持を行う予定であったが、PCK1による平面培養での実験で良好な結果を得ることができなかったため、卵巣明細胞癌オルガノイドをまず作成しその後、薬剤スクリーニングを行う方針へ変更した。そのため実験用動物購入費等を必要としなかったため次年度使用額が生じた。令和5年度にその実験を行う予定であるためそこで次年度使用額を使う予定である。
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